山本周五郎「晩秋」をBSジャパンで観る
大好きな山本周五郎中短編秀作選集2の「惑う」の中に収められている「晩秋」
と云う短編小説があります。
藩の財政破綻を回避するために、冷酷なまでに年貢の取り立てを厳しい施策を打ち出した用人進藤主計に施策の過ちを諫言し切腹させられた浜野新兵衛を父に持つ娘「都留」は進藤主計は親の仇です。
主君が代替わりして進藤主計の施政が裁かれることになり進藤主計は家老別宅に蟄居され都留が進藤主計の身の回りの世話係を仰せつることになった。
父の怨念を晴らすために懐刀を離さずに隙きを狙っていた。
進藤主計の日々に接するといつしか都留の心に変化が現れる。
礎を造る過程で避けて通れない施政の中で父が切腹になったことを進藤主計が心に深く傷ついたことを知る
原作は都留の想いと進藤主計の想いが交差していたものが少しずつ重なり合ってくる。
涙腺が緩みそうな展開になってくるのです。
そして・・・
BSジャパンで山本周五郎時代劇 武士の魂「晩秋」を観た。
原作のあの素晴らしい心の葛藤が・・・
原作が台無しだった。
進藤主計と都留が碁を楽しむシーンに何の脈絡もなくビックリした
黒装束の討ってが現れれ進藤主計と都留は屋敷から逃げ出し市中を放浪する
放浪中に進藤主計が足軽時代に産ませた娘を探す 進藤主計は足軽出身だったのかと感心するが原作には足軽の「あ」の字も出てこない
都留は頻繁に懐刀を抜くが原作には出てこない
都留の前に母の亡霊が現れて進藤主計を討て!と檄を飛ばすが亡霊がね・・・
山本周五郎の秀作が見事なまでに三流ドラマに仕立て上げられていた。
わが家に黒猫がやって来た
わが家に黒猫の赤ちゃんがやって来た。
猫の里親にならない?と何度となく聞かれたが猫の方が長生きするのでと断っていた。
以前にもサバトラの白を飼っていて20歳と云う高齢で天国に行った。
番猫としてネズミの出没に目を光らせていたが死んだ途端、ネズミが庭を走って行った
今度飼うなら黒猫か黒白の斑が良いと思ってはいたが猫の長生きを考えると二の足を踏む
それが1本の電話で話が進んだ
飼われていた黒猫が二匹の黒猫を産んで里親を探していたら尾っぽの短い方がすぐに決まって貰われていった。残っていたのが長い尾っぽの黒猫で乳離れを終わってすくすくと育っていた。
知り合いの聞いてあげるよ!
翌日になって黒猫欲しいと手を上げる方がいた。
\(^o^)/で連絡を頂いた方にOKの返事をした。
12月10日に受け取りに来てくださいと云われてお宅訪問すると小っちゃい黒猫はダンボールの中でキョトンとしていた。
土曜日だったので2日間だけ預かってリレー方式で月曜日には違うお宅に貰われて行きます。
ところが・・・
月曜日になって黒猫希望のお宅が年末は忙しいので年が開けてからで良いですか?と来たエ~~~と唸ってしまった。
未だ二十日以上もあるじゃないか
しかし、わが家の玄関を跨いたのであれば仕方がない
子猫用のエサに姫が使っていたトイレ用砂場を用意します。
ダンボールにチョコンと収まった黒猫はまさしく猫を被っていた。
生まれて3ヶ月程度の子猫です。
取り敢えず名前を付けようと
黒猫と云えばもう魔女の宅急便しか思い出しません。
魔女のパートナーと云うことで名前はジジです。
夏目漱石「吾輩は猫である」も黒猫でしたが、こちらは最後まで名前が付かずに猫のまま死んでいきます。ただ実際いた黒猫で漱石夫人は大層可愛がり「福猫」と呼んで可愛がっていたと聞きます。
走り回るは、カーテンをよじ登るのは朝飯前のようです。
砂場は以前使っていた姫の匂いが残っているのかなかなかスムーズにはいかない。
尻を上げる度に砂場に直行して躾の第一歩です。
ゆで卵・竹輪・生クリーム・チーズは好物のようです。竹輪だけは食べるけど骨を弱くするので食べるかどうかの確認をしただけ。
最初の頃は湯たんぽを炬燵の中に入れて暖を取らせたが、いまでは羽毛布団に潜り込んでいる。
そして飼い慣らしているのですが、預かっているだけの日々だが相当に懐いてきている。これは困りました。年明けまでのお預かり黒猫です。
古今東西 黒猫に纏わる吉凶があります。
◆ 黒猫は『魔法の猫』で、餌を与え、敬意をもって接する飼い主に幸運をもたらす
◆ 自宅の玄関先に見知らぬ黒猫がいたら、繁栄がもたらされる
◆ 近代以前の日本では「夜でも目が見える」等の理由から、「福猫」として魔除けや幸 運、商売繁盛の象徴とされ、黒い招き猫は魔除け厄除けの意味を持つ。
◆ 江戸時代には、黒猫を飼うと労咳(結核)が治るという迷信のほか、恋煩いにも効験 があるとされた。新選組の沖田総司は労咳を患って床に伏せっていた際、この迷信を 信じて黒い猫を飼っており、死の間際に斬り殺そうとしたが果たせず、自らの終末を 悟ったといわれる。
◆ 自宅の玄関先に見知らぬ黒猫がいたら、繁栄がもたらされる (スコットランド)
◆ 黒猫が住みついたら、幸運がやってくる (アメリカ、イングランド)
◆ 黒猫が道を渡ったり、自宅に入ってきたら、大変縁起が良い (イングランド)
◆ 黒猫は『魔法の猫』で、餌を与え、敬意をもって接する飼い主に幸運をもたらす ( 南フランス)
◆ 結婚祝いに黒猫を送ると、新婦に幸せが訪れる (イングランド)
◆ 月明かりの下、黒猫が行く手を横切ったら、伝染病で死ぬ (アイルランド)
◆ 黒猫が病に臥せる人のベッドに横になったら、その病人は確実に死ぬ。(イタリー)
◆ クリスマスに黒猫の夢を見たら、翌年は重い病気にかかる (ドイツ)
それに黒の子猫
黒の吉凶に加えて幸運の特徴を持っていました。
長い尻尾の子猫の尻尾がカギシッポになっているんです。
我が身に幸運が訪れるのか、寝ている私の横で寝るのだから私は重い病気にかかるのか
ところが12月30日にショッキングな出来事が起きた。
憚られるプライベートの事なので書くことは控えないといけないが、黒猫が来てから何気なしに気づいた出来事なんです。
昨夜は黒猫のジジを横に寝かせながら寝ることが出来ませんでした。
そんな訳で黒猫のジジは幸運を運んできたのか、はたまたアクシデントを運んできたのか、しかし年明けにはジジはわが家を離れていくのかな・・・思案のしどころです
別れの挨拶
不思議なこともある。
11月26日に親戚のお父さまが亡くなった。
お父さんは根っからの猫好きで農作業に行くときも一輪車に乗せて畑に連れて行った。また猫もおとなしく一輪車に乗ってお父さんの農作業の付近で遊んでいたと云う。
部屋に居る時は猫の方からお父さんに擦り寄り膝の上で寝ていた。
そんな猫が5年前に3匹の赤ちゃんを産んだ。
自然に任せていたので避妊手術を行っていなかった。2匹の赤ちゃんは知り合いに貰われて行って残った1匹を親子として飼うことにした。
その親猫が赤ちゃん猫を置いたまま家出をした。
親猫が赤ちゃん猫の時から飼っていたので7年の歳月が過ぎたが、いままで一度として2日と家を空けたことがないと云う。
7年も飼ったその親猫が家出をしたんです。2日経ち3日経ち1週間経っても戻ってこない。
首輪をしていたのですぐに見つかるだろうと思って
近所に張り紙をだして捜索をしたが情報はひとつも上がってこなかった。
交通事故で猫が轢かれたとも聞かないし。
もしかして死ぬ場所を探して家出したのかも知れないと落胆の色が濃くなった。
その間に残していった赤ちゃん猫がすくすくと育ち大人猫になってしまった。
家出した親猫のことはすっかり記憶から消えていた。
お父さんも家出した親猫と同様に赤ちゃん猫にも愛情を注ぎ、一輪車に乗せて畑仕事に行っていた。赤ちゃん猫も家出した親猫と同様にお父さんになついて一緒の布団で寝た。
病院で亡くなったお父さんの遺体は通夜・告別式を迎えるためにセレモニーホール安置された。
3日めになると飼っている猫の餌が心配になり家族の方が家に戻り、猫の好きな煮干しに缶詰を空けて置いてきた。
明けて翌日は出棺を終え、お斎(おとき)を行って家路に着いた。
最初に家に着いたお母さんが「え~~~!」と大きな声をあげた。
家族がビックリして、どうしたの!と聞くと、お母さんは声にならない声をあげて猫が猫が・・・と指を指した。
玄関前に薄汚れ今にも切れそうな首輪をした1匹の猫が佇んでいた。
みたみんなは一様にイチコ(家出した親猫の名前)だ!イチコだ!イチコが帰ってきたと騒いでいる。
あんなに可愛がってくれたお父さんとの別れに来たのであろうか
お母さんは泣いている。
イチコ!もうどこにも行かないで!と抱きしめていた。
亡くなったお父さんに会いに帰ってきたのだ
お父さんと最後の別れがしたかったのだろう
二度と家出しないように玄関の鍵を閉めた。
語り尽くせない丙午のB型
netで拾った女神
彼は東京での仕事も多く出張で留守をする。得意先で行われた夕方の会議のときにこんなことがあった。会議中なので電話にでることはないがその日は5分置きに電話が掛かってきた。その合間には怒りのメールが断続的に受信した。
これは、何かあったに違いない!大変なトラブルが起きていることを予感される電話やメールに心が凍りついた。
中座して携帯を耳に当てたのは云うまでもない。
「どうしたの!何があったの?」心配な声で喋る彼の気持ちを逆なでするように・・・
「どうもこうもじゃないわよ、居間の電気が点かないけどどうしたの!」と怒り声。
「エッ!居間の電気?」
「早く電気を点けてよ」
東京にいて、それも会議中であるにも関わらず目先の出来事が最優先なんです。
実家は雪深い山間にあります。
屋根に積もった2㍍を越す雪を下に落とします。
屋根の斜面に足を滑らせないようにスコップとスノーダンプを活用して庭先の安全な場所に投げていると、たまたま玄関に掛かっている屋根を修理に来ていた大工さんに雪の塊が落ちたことがあった。大工さんは落ちてくる雪を察知して体を避けたが運悪く肩に落ちてきた。それを見ていた丙午・B型の嫁さんは烈火の如く怒り出した。
「雪を玄関の方に落とすなと云っただろう」
「雪の怖さを知っているのか!」
「男のくせになんて聞き分けのない奴なんだ!」
「今度落としたらただじゃ置かないからな」
雪で体が冷えているのに彼は肝を冷やした。
朝、気分が良かったのか夕食は刺身が食べたいね・・・
刺身か、良いね。俺が買ってくるわ と請け負った。
魚では有名なスーパーに行きマグロを筆頭にエビやサーモンを取り混ぜて文句のない刺身の盛り合わせを手にルンルン気分でご帰宅遊ばしたのだが・・・刺身の盛り合わせを見た彼女はきつい一言が発せられた。
「カツオが入ってないけど!」
「私はカツオが食べたい!」って云わなかった?
カツオが食べたいなんて一言も聞いてないけど・・・と彼は心のなかで思った。
豪華な刺身の盛り合わせがお通夜のように淋しい盛り合わせとなった。
朝の散歩から戻ってきた彼は駐車場脇に置いてある紙袋を「忘れたんだな!」と思って家の中に持ち帰った。朝の食事を終えた二人は昨今の話題に花を咲かせていたが、突然怒声に変わった。
「あのゴミを何で持ってきたの?」
「あぁ~紙袋? T-シャツでゴミじゃないし」
「あれはゴミなの!」
ゴミと決めつけた彼女は一歩も譲らず、未だ着れる服が入っていたがゴミと決めつけられ燃えるゴミになってしまった。
このゴミ騒動は忘れた頃にお気に入りのT-シャツがないんだけど、探してよ!
あのT-シャツはゴミだと云って捨てたじゃない!
誰がゴミだと決めつけたのよ。
一事が万事この調子で家庭は回っていく。
丙午に加えB型を背負っている。仕事は半端なく出来るし教授の拝命も近い
この外面の笑顔がまことに恐ろしい。
語り尽くせない丙午のお話しです。
追記
彼女の兄はしみじみと義弟となる彼に云った。あいつ(丙午の嫁さん)の怒り方は経験しないと実感は湧かないが尋常でない。地獄に落とす怒り方をする・・・いろいろありますよ、気にしないで楽しく行きましょうと。
蓑虫になったトラ猫
夜空には南天から西側に移動したオリオン座が輝いている。
冬至を境にまた東側に移動をはじめる。
未だ目も明けやらぬ朝の5時です。
倉庫に商品の確認に行った。
その猫は奥まった低温室の前でダンボールを布団のようにして覆って顔だけ出して動きを止めて横になっていた。
死んでいるのかなと思っていたので近づくとニャ~オと鳴いた。鳴き声がして驚いた。
ダンボールは台車の下に広がっていたので、もしかして怪我?と急いで近寄りダンボールを取ろうとしたが容易に取れなかった。
台車の下に猫の体が延びていたので台車の車の下敷きになったかも知れないと、先ずは台車を抱えて移動させたが猫はピクリともしないのでどうしたのだろう。
猫はトラ猫で毛並みが良く子どもではなかったが大人になったばかりの顔つきだった。
ニャ~オニャ~オと悲しげな鳴き声に、猫の頭を撫でて「ちょっと待っててね」
ダンボールを取り除こうと指先をかけると指先にベタッとする感触が広がった。
あ~!ダンボールには強力な粘着シートになっている紛れもない「ネズミ取りシート」です。この場所は4~5台あるパレットに30㌔の新米が山積みされていている。
新米を狙って来るネズミ一味を撃退するために仕掛けられた粘着シートが至るところに置いてあります。
その粘着シートに猫がかかるなんて・・・。
それも具合が悪いことに粘着シートが設置場所が決まらずに4~5枚が並べておいてあった。
大人になりかけの猫は猫会議に出席していた親の目を盗んで散歩と洒落込んだのであろう。それとも米蔵に来てネズミ一味を発見したのかも知れない。
猫は思った。
これは手柄だ!得意の忍び足でネズミに近づくと、ダンボールに光るものが見える、経験の浅い猫は思った。この光るものはビニールであろうと、ビニールであれば何も問題はない、一歩足を入れた瞬間にビニールとは違う感触を得たに違いない。
危険を察知して飛び上がったが、時はすでに遅かった。
飛び上がった猫の足にはしっかりと粘着シートがお土産で付いてきていた。
もうそれからと云うものは粘着シートとの格闘で動き回っている間に次から次と他の粘着シートに抱きつかれ万事休すとなった。
まるで木からぶら下がっている蓑虫ではないか、
粘着シートが体中を覆って、自由を奪われ口だけが無事だった。
もう何時間格闘したであろうか、身動きできないこの体で死ぬほど泣いたが誰も来ない。もう声も枯れた。お母さん~内緒で散歩にでてゴメンナサイ!
足音が聞こえる。
話し声も聞こえる。
ニャ~オと泣いた。
人間の声だ。
「どうしたんだ! 粘着シートに捕まったのか!いま助けてやるから我慢しなさい!」と云っている。
嬉しくてニャ~オと鳴き続けた。
これは困った。
ネズミ取りの粘着シートに貼り付いた猫をどうしたものかと、先ずはベッタリと毛に貼り付いた粘着を剥がしていく。近くにいた人に雑巾かなにかに水を付けて持って来てくれるように頼む。
猫に覆っている粘着シートは外したが、猫のしっぽも粘着シートに貼り付いている、まるで猫の標本にようになっているんです。
この粘着シートは強力です。
猫の上に被っているシートは外したが、問題はここからだった。
猫の体はコンクリートの床に粘着シートごとベッタリと貼り付いていた。
これは動けないな。指先ではやりきれないので水で濡らした雑巾を猫と床の間に差し込んで猫の毛を拭きながら外していった。
私にも判断の甘さがあった。
湯沸かし器からお湯を汲んでもらえば良かった。お湯で猫の体を拭きながら粘着を取っていけば少しは良かったかも知れないが水では粘着部分が取れなかった。
コンクリート面から外していく時は猫も相当に痛かったのか鳴き声から怒った声に変わった。それでも剥がさないことには動けない。
剥がし終えると猫は一目散に逃げたが粘着部分が動く度に引っ付いて行くが、我が家に向かって走って行った。
体は粘着が貼り付いたまま行ってしまった。
私も早く粘着シートを取ろうと焦ってしまった。もっと時間をかけて剥がしてあげれば半分ぐらいは粘着を取れたのではないかと反省した。
そこで思った。
飼い猫だったのか、野良猫だったのか・・・。
飼い猫だったら家族はビックリするだろうがお湯にシャンプーでも付けて洗ってくれるだろうが、野良猫だったら明日への命がないかも知れない。
トラ猫の可愛い顔をしていた。
飼い猫であって欲しいと願った。
B型の丙午~最強です。
持って生まれた運命なのでしょうか
ネットニュースでは有名なヴァイオリニスト高島ちさ子さんが家庭内における罵詈雑言ぶりがまことしやか流布されている。
その恐怖たるや身近にいる者しか分からない。
八百屋お七
先ずはプロローグから進めたい。
15名ほどの社員を抱え日夜奮闘している友人がいる。50歳を越えて中年の域にどっかと座っているが仕事ぶりはまさに獅子奮迅の働きです。
若い時はそれはそれはの美男子(イケメンの時代ではない)で落とせない女性はいなかったと豪語される。美男子の面影は維持したままの中年なのであります。
十数年ほど前の話ではありますが、この美男子の容貌に降参した女性がいる。
女性はとある大学の教授を目指して勉学一筋の生活をしていた。
優秀な方である専門分野では指名を受けるほどのスキルが高く学校に通う傍ら仕事にも従事され高収入を得ておられた。
その方がふっと振り向いた時に独身の今を寂しく思ったと云います。
意を決してネットに恋人募集を登録されたのです。
この方可愛い方で銀河鉄道999にでてくるメーテル似だと評判の美人だったのです。
恋人募集を登録された日から、日に300通~500通のメールが飛び込んできたと云います。最初の頃は真剣に読んでいたそうですが、余りの多さに面倒になり送られてくる顔画像だけをチョイスして弾かれて行ったと云います。
もう嫌になった!
10日も経ったころ登録を解除しようとした時に友人の出したメールが飛び込んできた。画像をみるとストライクだったのですね。
はじめての返信が友人だったのです。運命としか云いようがありません。
友人も画像を含めたプロフィールを送りはしたが、返信くるなんて夢にも思わなかったと云います。彼はこの時期のチョット前に遠距離での家庭生活が破綻し離婚をしたバツイチの独身だったのです。なんら問題はないのです。
5000通の中から選んだ人は同県人でした。遠距離ではありますがメールで近況を語り、画像で妄想を抱かせます。人混みの世界から離れた山里の静かな場所で食事でも・・・いや、温泉に浸かりながら夜を徹して語り合いましょう・・・と話は進んだに違いありません。
まだお互いは仮面を被ったままで素面はおくびにも出さない。
勉強に夢中になり恋愛経験の少ないメーテルと選り取りみどりの酒池肉林を豪語する友人は洗車したベンツを駆ってメーテルを迎えに行ったのは云うまでもありません。
行く先は秘境の隠れ宿燕温泉。山男・山女が愛する秘境の地です。
多機能ベストにデバッグを担いだ山男に混じってベンツから降り立った二人は炉ばた旅館に消えて行った。
まだ丙午のDNAを持つメーテルの恐ろしさが分かっていない友人は手練手管でメーテルを翻弄していったのです。引き返すことの出来る地点から少しずつ離れていきます。
寝技での数々が歓喜の雄たけびとなって人生の伴侶が生まれてきました。
結婚の話が本決まりになった頃にメーテルの本性が現れてきます。メーテルの画像を携帯の待ち受け画面にしていた友人はこの世の春であった。
冬が来るなんて予想打にしません
彼女が住む街に行ったときに
仕事の用が早く済んだので彼女の住むマンションに出かけた。事前に今日伺うとの連絡を入れてあったが時間の指定はなかった。
特に問題はなかろうと早めに着いた彼はチャイムを押した。
出てきた彼女は、何でこんなに早く来たの?と取り付く島もない
時間が早くなったらなったで、連絡をしてよ と思いがけない怒声で震え上がった。
外食でどうしても行きたい店があって「その店に行きたい!」と指定された。
行ってみると満車で入り口には数人の方が並んでいる
並んでいることが琴線に触れたようです。
お店に来る前にドラッグストアに寄ったことが行けなかったようで、寄ったことで食べられなくなったと強い口調でお小言を頂いた。
これが、秘境の地で快楽に溺れる前であったなら「別れよう!」の一言も出たようだが快楽に溺れた二人は蟻地獄なのであろうか
ついには結婚の申込みに彼女の実家にお邪魔する日が来ました。
コシヒカリの中でもブランドの中のブランド米魚沼産コシヒカリを生産されている
盛り上がる宴会で気遣いながらおしとやかに振る舞う彼女を見て、この人を選んで良かったと改めて感じたと云います。
まるで山本周五郎「女は同じ物語」の紀伊と同じではないか!
後が怖いぞ~!と叫んでみてもデレデレになった彼がいた。
宴もたけなわ義母になるお母さまに呼ばれた彼は別室に連れて行かれた。
この度は結婚の申し出に嬉しく思います・・・が
○○子で本当に良いの?
今だったらまだ引き返せますよ。
○○子の性分を知らないでしょうが、ワガママですよ。頑固ですよ。
自分の意思が通らないと怒ることもありますよ。
心してかからないと苦労しますよ・・・と
本当に○○子で良いんですね。
何かあったら私に云ってくださいね。
私から○○子には注意しますからと念を押された。
お母さんにここまで云われるメーテルはどんな性格をしているのでしょう
大丈夫、僕は女性の扱いには慣れているんです(心のなかで叫んだのです)
後日に・・・其ノ2は続く
不慮の事故~不幸中の幸い
その日は晴れていて気分の良い日だった。
珍しく仕分け管理も終わり、手間取っている方の仕分けを手伝った。
後ろの方でフォークリフトに乗っている方が見えた。
フォークリフトの扱いに不慣れであったのか前に後ろにとタイヤを回転させていた。
仕分けの検品が終わりチェックシートに記入を終えた時に悲劇が襲った。
先ほどのフォークリフトが私の後ろを縫うように通り過ぎようとしていた。その瞬間に私は足が固定されたまま90度に倒れた。
突然の出来事で意識が飛んだ。
気がついた時はフォークリフトに右の足首が挟まり身動きでない状態で、倒れたまま状況を飲み込めようと必死にもがいていた。
リフトを運転していた人はリフトを前に進めたほうが良いのか、後ろに退いたほうが良いのかすら分からず気が転倒していた。
倒れている私を覗き込むように同僚が119と連絡を取り合っている。
動けないリフトを揚げるために他のフォークリフトが飛んできてリフトがリフトを持ち上げ私は自由になったが足首から大量の血がボトボトと流れ落ちていたが痛みはまったくなかった。
救急車に乗せられた私は隊員の方が救急医療病院に連絡を取り合ってすぐに手術を行う病院を探し駆け込んだ。
それからは・・・
身内が呼ばれたようだ。医師からは輸血の有無を確認されたがエホバの証人ではないので輸血はOKと答えた。緊急手術の前にレントゲン・血圧・心電図・麻酔の説明が矢継ぎ早に行われ手術室に入った。
5時間に及ぶ手術だった。
期待した臨死体験はなかった。
昏睡なのか仮死だったのか分からないが夢すら見なかった。
青空が広がる窓際のベッドで包帯でグルグル巻きにされた足首が吊られ唸っていた。
看護師さんの最初の一言が・・・手術は成功しました。麻酔が切れて痛みが出てきたら教えてくださいと云われた。
いまから相当の痛みが襲ってくるんだなと覚悟するしかなかった。
痛みは波が押し寄せるように息もできないほどの大きな痛みが襲ってくる、大きな波が去ると小刻みな飛沫をあげる小さな痛みが断続的に襲ってきた。何もする気が起きない。
家から文庫本を数冊持ってきたので読む・・・ひたすら読んだ。
読んでいる時は本の中に感情移入しているので痛みを感じることがなかった。
文庫中毒のようだ。
入院していた2ヶ月間に葉室麟は読んだ。
藩のお家騒動はなかなか面白い、武士はひとたび刀を抜くと相手を討っても切腹が待っているし討たれても死ぬ。武士はあらん限りの感情を殺すかにかかるようだ。
主君あっての家来は、主君が脳天気なアホでも主君は主君です。
赤穂浪士の主君浅野内匠頭は果たして良い主君だったのか・・・
などと痛みを忘れるために妄想していた。
病室は4人部屋で殆ど手術を必要とする方が入ってこられたが、手術後2~3日で退院される。深手を負った私は退院の目途がたたない。
毎日の検診を横目で見ながら遅々として進まない裂傷個所が塞がらない。
術後10日ほど経ったであろうか、順調に云っているので今日は抜糸をしてみましょうと期待を持たされた。
先生「あっ!開いてしまった!」
これが全てでした。折角縫った傷口が開いたんです。取り返しのつかない抜糸でした。
二週間での退院が二ヶ月に延びた原因ではなかろうかと思っています。
確かに裂傷としては重傷でした。
リフトがもう1センチほど進んでいたら骨が砕け、1センチ上だったらアキレス腱を断線していたようです。骨が飛び出て踵がブラブラと動いていたと看護師さんが口々に慰めてくれます。
神仏のご加護で不幸中の幸い と考えることにします。
術後1ヶ月の画像です。
手術前の画像がみたいと切望すると「卒倒するから止めたほうが良い」と云われた。
悲惨の怪我を見ている看護師さんが、傷の画像をみて治るかどうか心配したと云われた。
松葉杖で試験外出の許可をもらって会社に行き、請求書に入れるギフトのカタログの最終稿を作成した。傷の痛みを考慮せずに会社に来るように懇願された。
数回試験外出で会社に出向き片足で作業して無事カタログは出来上がった。
見舞客は引きも切らずにお見えになって頂き嬉しい限りです。
みなさんは一様に傷口を見て「声が止まる」傷口は足首を三分の二ほど線を描いている。
良く神経が繋がりましたね?
5時間も要した手術ですが神経がどうなったのか知らない
ただ今でも傷口がビクッと動くことがある。離れた神経が求めあっているのかも知れないと勝手に思っている。
術後40日を超えたころ包帯が小さくなった。
治る前です。でもまだ松葉杖です。
リハビリが組み込まれた。
何のためのリハビリかと不審に思っていたら悲劇は突然やって来た。
しっかりと両足で立ってくださいと云われ立とうとするが立てない!
その上、歩けない。歩くことが出来ないのです。
一歩を踏み出すことができない。
左足は足首をグッと前に倒れることが出来るが、裂傷を負った右の足首は前に倒すことができない、折り曲げることが出来ないのです。
まさか歩くことが出来ないなんて夢にも思わなかった。
酷い人は2日歩くことを止めると歩けなくなると云われゾッとした。
40日も歩いていないんです。足首が固くなり歩くことを拒否しているんです。
これは辛かった。
傷の痛みとリハビリで足首を動かす痛みが相絡まって、このまま一生歩けないのでないかと不安がよぎる。
人生の罰が与えられたと項垂れた。
1年前から予定で同僚が3日の休暇に入るのが近づいていた。
二人いないと朝の作業は目茶苦茶です。
退院の予定もないままに強制的な退院を願い出て怪我をした5月26日から2ヶ月目の7月25日に退院した。
仕事をしながらのリハビリでノロノロと仕事をした。
5ヶ月経った今は時折り傷口は痛み、傷の周りは腫れている。
先生曰く、腫れは血の巡りが悪いので起こる現象で1年ぐらいかかるかも知れないと云われた。
歩くことは問題なく歩けるが長時間の歩行は痛みが伴ってくる。趣味の戸隠神社奥社参拝は今年は出来ないかも知れない。
下手すれば足首が切断されていたかも知れない!
歩けるだけ儲けものでしょうか。
山本周五郎 「女は同じ物語」
山本周五郎の人生の機微を扱う場面に出会うといつも落涙する。
時代小説でありながら決闘場面はあまり出てこない。
葛藤する人情がゆったりと流れてくる。
そんな中で笑みがこぼれた物語があった。
山本周五郎「中短編秀作選集」1【待つ】に収録されている
--------女は同じ物語----------
「まぁ諦めるんだな しょうがない、安永の娘をもらうんだ」と龍右衛門がその息子に云った。「どんな娘でも結婚してしまえば同じようなものだ」と・・・。
梶龍右衛門は二千百三十石の城代家老で一人息子の広一郎は二十六歳である。
梶家では代々行儀見習として一年限りで富裕な商家とか大地主の娘を奉公に入れていた。その年も、許嫁のいる身でありながら女嫌いを立てに自由に闊歩していた。
その女嫌いの広一郎に世話係の侍女をつけたことを事後報告すると
「間違いがあったらどうするんだ!」と父親の意見に奥方(さわ女)は、いつもそんな風に侍女を眺めていたのかと反論する。
梶家では城代家老と云えどもさわ女に頭が上がらないかかあ天下であった。
侍女と云っても召使いです。寝間で襲ったら一生の不覚になり兼ねません。
父親は城代家老で広一郎もゆくゆくは城代家老になることが保証されているんですが
・・・スキャンダルは命取り、切腹の上にお家断絶が脳裏を過ぎたことでしょう。
奥方さわ女は固い信念をもって侍女を用意します。
広一郎は女は嫌いだと言い張っています。
安永つなさんと云う許嫁があるのに女は嫌いだと云っていまだに結婚しようとしません。これは私たちがあまりにも固苦しく育てたからだと思っているんです。
きれいな侍女でも付けておけば女に興味をもつようになるかも知れません。
広一郎についた侍女は
城下で大きく営んでいる呉服商の娘で名前は紀伊と呼ばせた。
これがまた色白の絶世の美女なんです。
広一郎に侍女として世話をするのが三月余り、広一郎は侍女の体つきを見て「温雅が体つきだな・・・」体のしなやかさや弾力ある柔らかなまるみやくびれが美しく現れていた
それに、肌が白いあくまでも白いそのあらわな腕に見惚れてしまった。
半年も過ぎると広一郎は紀伊を話をするようになった。
不思議なことに紀伊に話しかけると広一郎は赤くなるのを抑えることができなかったし、紀伊もまた同じように赤くなったり恥ずかしがる仕草が多くなった。
父と同じ書斎に入って書物を読んでいるに広一郎は空想の世界に入って書物を読み進めることが出来なかった。紀伊の事を思うと気もそぞろだった。
父上! 紀伊は誰かに似ているような気がするのですが
父親の龍右衛門は心配顔でお前は紀伊を好きになったのでないかと問うた。
お前は安永つなと結婚する身だぞ!母さんが承知しないぞ!と忠告する。
くれぐれも好きにならぬようにな 好きになったりすると大変なことになるぞ
父親の龍右衛門は案じるばかりだった。
梶家での行儀見習は1年です。すでに半年が過ぎようとしていた。
寝間で着替えていると紀伊がひどく沈んでいる様子が伝わってきた
「母上から叱られたのか?」
嫌いな人との縁談が持ち上がっていることと好きな人が別にいることを打ち明けたが、紀伊は耳まで赤くなり激しく息をしていた。
広一郎は紀伊に他に好きな人がいるのかとガッカリして落ち込んでしまったが、紀伊の悩みを解決してあげようと重い腰をあげた。
私に任せろ!と啖呵を切る。
ある日、紀伊は明日は実家の法事があり1日お留守を頂きました。と報告があった。
その時、紀伊は「広一郎さまも明日は非番でございましたね」
わたくしは本当は法事に行きたくないのです。
エッ! 明日はあなたも非番だ!
降って湧いたお誘いだ・・・。
二人でどこかに行きましょうとのお誘いだ!そうに違いない!
広一郎は紀伊に赤根の湯を知っているな?
紀伊が来るかどうかも分からないのに「明日の非番は赤根の湯に行ってみる」と断言した。
朝早く、赤根の湯に向かうが、フッと思い出したように赤根の湯に紀伊が来なかったらどうしよう、何のために赤根の湯に行くんだ。来るかどうかも分からぬのに、今からだと引き返すことも出来るし・・・
赤根の湯に着いた。
湯に入らずに部屋に佇むと「湯には行かれないのですか?」と声を掛けられた。そこには湯上がりの紀伊が座っていた。
早駕籠で着いて待っていたようだ。
座り直し紀伊が広一郎の女嫌いを尋ねられた。
これは思い出す度に口惜しいような憎たらしい思いが湧いてくる。
広一郎12歳で許嫁の安永つながまだ6歳のころで気の強いつなに良いようにからかわれていた。蛇の嫌いなわたしに面白いものが見せてあげるからと行って庭に連れ出し、草むらの中からひょいと小蛇を捕まえてわたしに投げてきた。気絶したのは云うまでもない。
梶家と安永家と一緒になって赤根の湯に来たことがあった。
つなが一緒に湯に入ろうと誘ってきた。渋っていると「男のくせにいくじなしね」と入ることになった。今度は湯船に浸かると、つなは潜りっこしようと云った。
髪の毛が濡れるから嫌だし、母上に叱られると云うと、「男のくせにお母さまが怖いの?弱虫ね」とあざ笑う。
そして、潜りっこすると何度やってもつなに勝てない。必死になって息を止めて死ぬかと思ったがつなに負けた。つなは大自慢で、さんざん私のことをからかって惨めな思いをした。
耐え難いことはもっとあるが、こんな気の強いつなとは結婚できない。
つなの事を考える度に震えがきてしまうと、つなとの遊びがトラウマとなって女嫌いに拍車をかけていた。それに母上と許嫁つなはどうも似ているようにおもう。
城代家老として権力を奮う父親と私生活では母の思うがままだ、すべての実権は母が握っている。父には母の握っている鎖の長さだけしか自由はないし、その鎖で思うままに操縦されている。つなの顔を浮かんでしまう。
ついに広一郎は決心する。
紀伊を知ったことでつなとは違う何かを発見した。
よし、紀伊と結婚しよう!
広一郎は意を決して母上のさわ女に侍女の紀伊と結婚したいと願い出る。
さわ女は、それは出来ません、あなたには許嫁者がいるんです。
結婚は安永つなと決まっているのです。
それにはあなたは城代家老になることが決まっているんです。町人の娘など娶ることは許されません。
さわ女はつれなく反対して父上に聞いてごらんなさいと云った。
父上は黙って聞いていたが、母上がわたしに意見を求めたことがすでに反対していることの証です。それに相手が紀伊でもつなでも結婚したら・・・女はみんな同じですよ。と諭した。
広一郎は諦めなかった。戦略を考えよう。
もう私は紀伊以外は考えられないだ。つなとは破談にして紀伊との縁談のことばかり考えていた。ところが紀伊は暇をだされて梶家から出ていっていた。
何が何でも紀伊との結婚を夢見ていた広一郎は焦った。
そこに一通の手紙が届けられた。紀伊からだった。
「わたしは必ず広一郎さまのところに戻ってまいります」と
紀伊の手紙を信じよう。広一郎は誓った。
女嫌いが治ったことを知ったさわ女は、許嫁つなとの結婚を進めていた。
「誰かを嫁に欲しいと仰ったぐらいですから・・・」と式の準備に力を注いでいた。
紀伊は戻ってこなかった。
ついに祝言の日がやって来た。
花嫁が到着した。
白無垢に綿帽子を被った花嫁と並んで座ると小さい頃の口惜しい思いが蘇る。
盃を交わしながら広一郎は紀伊を待った。
賑やかで陽気な酒宴は祝宴に変わり花嫁は仲人に手を引かれて座を立った。
紀伊・・・どうしたんだ。
最後のギリギリまできているんだぞ!と心のなかで叫んだ
結婚して1ヶ月が経った「俺の云ったことが思い当たったかね」 と父親が云った。
「結婚してしまえば、女はみな同じようなものだ」と云うことがさ
仰るとおりでした。 女は同じでしたよ
あのおしとやかな紀伊はどこに行ったのでしょう
葉室麟 秋月記を読む
いつの世も財政難に直面すると周りが見えなくなる。
資金繰りは知恵を絞った騙し合いなのであろうか
豪商から捻出するにも、あの手この手の手練手管が要求される。
秋月藩も福岡藩から分離独立した小藩だが福岡藩がいないとやっていけない苦しい台所を抱えている。株式の51%を握っているのが福岡藩と云うことになっている。
秋月藩は苦しんでいた。
親藩である福岡藩にお願いすると、資金を融通したその日に秋月藩は福岡藩の管理下に置かれることは明白であった。
藩主はわがままである
藩主の意向を組み家老宮崎織部は長崎から石工を呼んでめがね橋を造ろうするも、失敗して多額の資金が流出した、それでもめがね橋に固執して再挑戦してめがね橋を完成させるが、秋月藩は破産寸前に陥った。
家老が元凶と家老排除に立ち上がった小四郎は仲間とともに秋月藩が親藩の管理下に置かれることを承知で事の顛末を上訴する。
株式の大半を握っている福岡藩は秋月藩に対して家老宮崎織部を引き下ろすが家老織部はその先を読んでいた。
親藩の管理下になって財政は良くなるであろう、しかし、指揮権が親藩に移り出向重役の顔色を伺いながら藩を立て直すことができるのかと疑問を持っていた。
高潔を求め分離独立に向けて小四郎は奮闘するも、親藩との蜜月を維持したい保守派との戦いが始まる。それまで仲間だった者は家老排除で重役に出世して我が身が可愛くなった。
秋月藩で殺戮を繰り返す親藩が送り込んだ伏影(隠密)との死闘もある
本藩に試されて「借り入れの交渉に行って来い!」と大阪に乗り込み豪商との駆け引きで借り入れに成功するが、賄賂を受け取ったら貸しましょうとの条件を受け入れる。
賄賂のお金は秋月に戻り重役に分配したことが、金をばら撒いて中老になったと陰口が広がる
その上、伏影を退治したことで伏影の仇敵になった小四郎は1対17の果たし合いに臨む。この時は仲違いの仲間が助勢した。秋月を襲った自然災害で窮地に追い込れ、仲間との溝が深くなり孤独になる
小四郎は自分が排除した元家老織部の胸中が知りたく織部に会う
織部は小四郎の働きを知っていた。
「ひとは美しい風景を見ると心が落ち着く、なぜなのか分かるか」
「山は山であることに迷わぬ。雲は雲であることは疑わぬ。人だけが、おのれであることを迷い、疑う。それゆえ、風景を見ると心が落ち着くのだ」
「小四郎!おのれがおのれであることをためらうな。悪人と呼ばれたら、悪人であることを楽しめ。それがお前の役目なのだ」
織部の言葉に小四郎は深く頭を垂れる。
小四郎を慕う詩人がいる 名前を猷と云う
詩人は悪人と呼ばれ評判の悪い小四郎を一緒に江戸に行きましょうと懇願する
「それにしても小四郎さまの評判は悪うございますね」
「それほど悪いのですか」
「はい、なんでも大阪の商人から賄賂をもらい、その金でご重役の歓心を買って、中老にまでご出世あそばしたとか、家老の地位を狙って、かって生死をともにした友と争い、昔の友情など踏みにじるおひとだと云うことです」
「なるほど、当たってないとも云えませぬな」
「どうして、大阪商人から金など受け取られたのですか」
「金と云うものは天から雨のように降ってくるものではない 泥の中に埋まっている。金が必要であれば誰かが手を汚さねばならぬと云われました」
「それで、ご自分の手が汚れてもよいと思われたのですか」
「どれだけ手が汚れても胸の内まで汚れるわけではない 心は内側から汚れるものです」
「汚れぬ心を持っておられるということですか」
「そうありたい、と思っていますが、さて、どこまでできるものか」
小四郎は秋月を襲った自然災害で藩に多大な被害をもたらしたとして中老を辞し隠居するが、こんなに苦しい時に藩主が参勤交代で使用する船が欲しいと駄々をこねる。この時ばかりは隠居の身でありながら断絶した仲間と共に藩主交代を本藩に上訴を試みるが、藩主に察知され上訴は失敗する。
高潔であっても正義が勝つとは限らない
岩倉具視の策略に負けたセゴドンはそう思ったのかも知れない。