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人間ウォッチング

2006_06_25_0210001

雨が降り続き、少し肌寒い日であった。
ごったがえする東京駅の新幹線ホームで上越新幹線 二階建て車両のトキに乗り込んだ。いつもは混雑する時間帯であったが、水曜日と云うことであるのか、意外と空いているようだ。
早々と乗り込み、指定席に座り新聞を広げて発車時刻を待ちながら、フッと窓の外に目をやると遠目にも重い荷物を持って肩で息をして、息切れ寸前で駆け込んで滑り込みセーフ!の方が入って来られた。
その方は、大きなアタッシュケース2個に三越の紙袋には、はちきれんばかりの書類を入れ、尚且つ、ショルダーバッグを肩に掛けて同じ車両に乗り込んで来られた。
そして、私と同じ列の反対側の席に着かれた。

通路を挟んだ列に陣取った私は、肩で息する紳士に興味が湧き、読みかけの新聞を読む振りをしながらフクロウの目の様に大きい眼を右側に寄せて、見入ってしまった。新聞紙が盾になり横目でのウォッチングは目が疲れるが、しかし、面白い光景だ。

席に着かれたその方は、時刻どおりに新幹線は動き始めると、空いている隣の座席に重いアタッシュケースを置かれた。まるで、その方は車内の小さな書斎であるかのように落ち着いて書類を紐解かれて仕事が始まった。

やおらアタッシュケースから書類の束を掴みアタッシュケースの上に重ねられた。
上着のポケットから色鉛筆やサインペンを取り出され、いかにもスタンバイOKの合図のような仕草であった。

アタッシュケースの上に乱雑に置かれた書類の一片が散らばり横文字が見える、横文字に弱い私は横文字を見ると得も言われぬ脳が刺激され、クラクラと眩暈がする。
英語であろうと・・・英語で書かれた書類の束を掴むと座席の前の小さなテーブルに置いて、1枚1枚確認するも一瞥して判断され、不要なものは、その場で破っている。
破った書類をコンビニの袋に無造作に詰め込むが書類があっちこっちに散らばってしまっている。
一心不乱に、書類の1枚1枚を手に取る素早さと、処理するスピードは見事な手捌きである。慣れた手つきとは、このような事を云うのであろう・・・。
束ねた書類を横の座席に積むと、レポート用紙らしきものを取り出しテーブルに置き、書き始めた。頭を掻きながら書いている姿は、髪を振り乱して書く奇人変人として評価の高い小室直樹氏を彷彿させる。
もう、座席の周りは英語の文字が溢れて目茶苦茶だ。
アタッシュケースは二つとも口が大きく開けられ、書類が散乱している。

遂には、期待の三越の袋に手が掛かった・・・何が入っているのかとても気になる。
はちきれんばかりの袋からは英字新聞が取り出された。凄い量の英字新聞。
見て読むのが早いのか、破っていくのが早いのか・・・破られた新聞の紙片は宙を舞い紙吹雪となり床に散らばっていく。
書斎と化した座席は、目に見えない赤外線が張り巡され人を寄せ付けない。
この方は・・・どこまで行かれるのか

次の停車駅で指定席の方がお見えになったらどうするのか、人事ながら気になった。
幸いにも上野・大宮・高崎と順調に席は埋まらず安堵した。

どうやって片付けられるのか興味津々であったが、私の下車する越後湯沢駅が近づいてきたので人間ウォッチングも消化不良で終わりそうだ。
ところが・・・。
車内アナウンスが流れると、先生と思しきヨレヨレの紳士は、急に立ち上がり、小さな座席の前のテーブルにアタッシュケースを置くと、散らばった書類を集めて、無造作に詰め込んで行かれる、それも凄いスピードで整理が始まった。
飲み干したペットボトルも一緒に詰め込み蓋の閉まらない厚みになった。
「あ~~~蓋が閉まるのか」と思った瞬間!
押さえ込んだ反動で蓋が大きく反り返り、無造作に詰め込まれた書類が投げ出され空中で踊り始めた。
前にも増して、目にも留まらぬスピードで散乱した書類を拾い上げると、悲鳴を上げたアタッシュケースに詰め込み、閉じていかれた。
座席に散らばった大量の書類・英字新聞は、もう要らないのであろうか。
足で座席の下に押し込まれた。散らかした後始末は、次に座る方へと移管された。
越後湯沢駅に停車するや否や、少しは軽くなった書類のケースを肩と手に持ちながら、人混みに揉まれるようにして降りて行かれた。
越後湯沢駅の長い階段を転ばないで行かれたのか・・・
先生!あなたは、どこの先生ですか?
後をつけて確認したくなりました。

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