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ドラマ「火の魚」を観た。

3月13日。NHKドラマを観た。
原田芳雄・尾野真千子主演のドラマ。『火の魚』

室生犀星が実在する製本作家の栃折久美子さんに金魚を魚拓にして欲しいと依頼したことを書いた小説「火の魚」がドラマになった。室生犀星の文庫本『蜜のあわれ』に収録されていたのを読んでみた。

「蜜のあわれ」では、金魚との官能が描かれ、「火の魚」では折見とち子との魚拓に関する始終が描かれている。
ドラマは、原作を壊さず生と死を見つめあう素晴らしい出来で感動した。二人芝居のようでもあり、傑出した最高のドラマだったと思います。
そして、シナリオが良かった。脚本を手がけた渡辺あやさんの才能に乾杯です。

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作家として精魂尽き果て、創作意欲を失った老齢の作家村田省三は瀬戸内の島で官能小説の連載を書いている。東京の出版社から折見とち子が原稿を受け取りに来るところから始まった。

新たに村田省三の編集者になった折見とち子に「お前なんかに俺の原稿は渡さない!いつもの編集者を寄こせ!」と駄々をこねるが、折見とち子が影絵芝居をすることに興味を示し、島の子どもたちに影絵芝居を見せて欲しいとお願いする。

作家村田省三に対する編集者折見とち子との掛け合いは、折見とち子の目上の人に対するたしかな日本語が出てくる。
「拝読いたします・・・」「僭越ながら・・・」「お言葉を返すようですが・・・」などと聞き慣れた言葉であるが、メリハリが利いていてハッとさせられる。
強い信念が伺えるのです。

類い稀な作風で時代を築き、あれほど見事な作品を世に出した作家が、島に篭り三流のエロ作家になっていることを批判する場面もある。村田が可愛がっている真っ赤な金魚をモチーフにした官能小説が読者の人気を浚っていることに我慢がならない折見であった。

こんな会話が交わされたように思う。

村田「原稿を読んだ感想は・・・」
折見「今回も素晴らしい出来ばえです」
村田「バカにするな!」
  「俺の本なんて一冊も読んだことないだろう!」
折見「お言葉を返すようですが、先生の本はすべて拝読させて戴いております」
折見「いま連載中の火の魚は、あまりにもひどい、我慢がならないのです」

村田は、見透かされ、心に燻っていた本音を言い当てられてしまった。

最終稿の原稿を持ち帰りしなに「先生!単行本の装丁はどうされますか?」と聞く。
官能小説のモデルでもある可愛がっていた金魚を見て、金魚の魚拓にしてもらいたい。しかし、折見は、それでは、金魚が死んでしまいますが・・・。
それでも良い。と。

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魚拓作りがはじまったが、折見は金魚の死と向かい合っていた。
見事な魚拓が出来上がったが、折見は出来上がった装丁を持って島に来ることはなかった。

折見は、ガンが再発して入院していた。
それを知った村田は狼狽して、金魚を殺し魚拓にしたことを後悔する
必死になって同じ金魚を探そうとする村田であった。

スーツに身を包み、抱えきれないほどのバラを持って病院に見舞いに行く村田。
折見は、ポツンと一人ぽっちになって生と死の狭間を見つめていた。

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パジャマからスーツに着替えた折見は最後の別れなのであろうか、村田と向き合う。

こんな場面がある。
「先生がそんな大きな花束を抱えて座っておられるせいで、病院中の女が色めき立っております」と軽口を叩き。孤独だと思った私、私以上に先生は孤独でした。と笑顔を見せ、花束を抱えた折見は幸せそうであった。

島に帰る船の中で
村田は・・・
「おまえ自身が持って生まれた命の長さに、何の文句がつけられよう。そして、縁があったら今生でまた会おう」と、敬慕の念を示し、心配するな、そんな遠くない時期に俺も後に続く

と云ったように思う。

□□□ 追記 (訃報) □□□ 

2011年7月19日
原田芳雄さん(71歳)がお亡くなりになりました。

ドラマ「火の魚」では圧倒的な存在感を示し、後世に残る名ドラマに仕立てられました。
原田芳雄さん存在なくして語ることの出来ない「火の魚」です。素晴らしいドラマでした。

心よりご冥福をお祈りいたします。

合掌。

 

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コメント

初めまして。
「火の魚」見ました。
パジャマからスーツに着替えた折見さんの場面ですが、
最後の別れであること・・・村田先生に会うのにパジャマでは先生に失礼にあたるとか・・・好きな先生に会うのに恥ずかしいとか・・・いろんな事を思いました。

「その街のこども」もいいドラマでした。
脚本、渡辺あやさんのドラマ これからも気になります。

投稿: jun | 2010年3月22日 (月) 20時09分

cancer
junさん (=゚ω゚)ノ o(_ _)oペコッ こんばんは。

折見が入院中に点滴を片手にポツンと物思いに耽るのは
先生に会いたい・・・との想いもあったでしょうね。
先生を見つけた時の眼差しは女性でした。

まさしく、近年にない良いドラマだったと思います。

> 「その街のこども」もいいドラマでした。
いま再々放送を待っているんです。

> 渡辺あやさんのドラマ これからも気になります。
なによりも、言葉がきれいですね 日本語って美しい!

コメント戴きありがとうございます。

投稿: いもがらぼくと | 2010年3月22日 (月) 21時40分

火の魚
再放送から毎日みてます何時までつずくか楽しみです
尾野真千子さんの勝ちと思いますが
ありがとう

投稿: | 2011年3月23日 (水) 21時37分

cancer

毎日、ご覧になっているんですか
素晴らしいですね
エライです。

投稿: いもがらぼくと | 2011年3月24日 (木) 21時22分

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