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吉田修一「悪人」って悲しいね。

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朝日文庫の上下巻で出版されている長編小説 吉田修一「悪人」をいっきに読み終えた。
嫌いな朝日新聞の夕刊に連載された「悪人」で、読者が増えて、朝日新聞の夕刊の部数が伸びたと、いわしめた連載小説とある。
映画化にもなり撮影は終了。今年秋には劇場公開が予定されているようです。

主人公は清水祐一と云った。27歳で髪の毛を金髪に染め背の高い土木作業員をしている。もの静かで思いや本音を口に出して表現することが苦手な純朴な面もあるが、物事を深く考えて進むことより、一途な気持で突き進む軽いところがある。
仕事ぶりは真面目で、祖父母の面倒をみる心やさしい青年である。

愛する人を巻き込むことを避けるために、罪の結末を一人で背負っていく覚悟の行動は恋人を守り通す男の意地があるようにも感じられる。
殺人者なのに・・・なんと悲しい殺人者なのであろうか。
読み進むに涙を禁じえない。
運命に悪戯があるならば、弄ばれた運命であったのか
生まれつきの境遇は、根付いた葦を掴むことすらできないのでしょうか。
誰一人として悪く云う人がいない・・・ただ、内向的な性格が災いしたのか。

特に罪が重いとされてきた尊属殺人やら、バラバラ殺人が当たり前のように報道され、殺す側と殺される側との脈絡もない、訳の分からない行きずりの殺人が日を追うごとに増して震撼させられるが、毎日続くと報道もされなくなるのであろうか。
怖い世の中になった。
そんな殺人事件であるが、淋しくも悲しい殺人者にスポットを当てて
殺人を犯す心理を、周りを巻き込んでいく。

話の展開は
当事者やら関係者の人間相関図が示され、本筋の合間に拘わる人間の生い立ちをなぞり、証言する供述やコメントを引き出し、おのおのが暮らしていく人間としての思いや内面が醸しだしてくる。

そして事件は起きた。
社員寮に住み、保険外交員をしている石橋佳乃が深山幽谷で心霊スポットで名高い三瀬峠で絞殺死体で発見された。社交的な佳乃は、まだまだ遊び足りないと思っていた。そして昼間の顔とは別に夜を彷徨う娼婦の顔を持っていた。
祐一と佳乃は出会い系で知り合いデートをした。金で割りきる娼婦としての佳乃と1回だけのセックスで虜になった祐一とは、考え方に大きな開きがあった。祐一からの誘いを断り、金持ちの大学生で気ままなボンボンに誘われるまま三瀬峠に行き、そこで、喧嘩となり車から放り出される。
佳乃のことが心配で後をつけてきた祐一は助けようと、佳乃に手を差し伸べる。
やさしい祐一であった。

事件は膠着状態となり、心配でオドオドしながらも仕事に精を出し、祖父母の面倒を見ている祐一は、気が狂いそうになる。
そこに、一通のメールが入る。
以前、出会い系で登録していた馬込光代からのメールだった。光代は29歳。妹とアパートに住み29歳のいままで、お付き合いをした男性はいない。
誰でも良かった・・・。
誰かと話がしたいと、まだ会った事もない祐一にメールを送った。
これも、また運命なのですね。

二人は出会い。光代は祐一を好きになった。
祐一は、心の葛藤と闘いながら光代との逢瀬にひとときの安らぎを覚えた。
祐一は、覚悟を決めて光代に、ことの一部始終を語り、警察署に向う。
そこで、光代は・・・重大な決心をする。

人生って不条理ですね。

祐一が、母に捨てられる場面が出てくる。幼い子どもをフェリー乗り場に連れて行き、お父さんに会いに行こうね。切符を買ってくるからここで待っててね。と。
戻って来ない母を、一晩中フェリー乗り場で待つ祐一。
悲しい運命を背負った祐一です。
しかし、祐一の頼もしい家族である祖母は、祐一の犯した罪の贖罪として、お詫びの行脚で訪ねる日々があるのです。

母と名の付く人は強いな・・・。
祐一が彷徨っているときに、祖母は巻き込まれてしまった怖いマルチ商法の事務所を訪ねます
そして、自分に言い聞かせるように語り念じるのです。

「祐一!逃げたら駄目よ。怖かろうけど、逃げたら駄目よ。逃げたってなんも変わらん。逃げたって誰も助けてくれんとよ」

■■
この小説に続きがあるならば、光代と祐一は・・・
幸せの黄色いハンカチのようにハッピーエンドで終わるでしょうか。

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コメント

優秀な弁護士がつき、情状酌量してもらって、ぜひ、幸せな結末を思わずに入られませんでした。

実母にお金をせびる優しさ,、光代に対する思いやり・・・切ないですね。

投稿: のんびり猫 | 2010年4月 3日 (土) 20時34分

ずいぶん前に読みましたが思いだします
涙がこみあげました

やはり、生まれたときは、みんな平等だと言うのは
間違いだと思いました。
生まれた時の環境を引き摺っていくのが人生なんですね


投稿: エリンギ | 2010年4月 4日 (日) 05時53分

cancer
のんびり猫さん こんにちは。(=゚ω゚)ノ o(_ _)oペコッ

死刑になる覚悟が思いやりも頂点に達しました。

自分を捨てた母親なのに・・・親子であることを確めたかったのですね
子どもの心、親知らずと云った感じです

刑期明けに待っていることでしょう

投稿: いもがらぼくと | 2010年4月 4日 (日) 10時27分

cancer
エリンギさん こんにちは(。・ω・)ノ゙ コンチャ♪

これが運命であれば、辛く切なく気の毒な運命だったでしょう
気丈な祖母が見守っていることが嬉しいですね

どんなことがあっても家族は味方なんですね
孤独じゃないと云うことですね。

投稿: いもがらぼくと | 2010年4月 4日 (日) 10時31分

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