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終わらざる夏 上巻

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予定で行けば8月15日の終戦記念日に読み終える予定でした。上巻だけでもと思い、取りあえず八月中に浅田次郎「終わらざる夏」の上巻を読み終えた。

硫黄島に星条旗が掲げられ、南方の砦であった沖縄も陥落した。
島国である日本は絶対的優位な海の制海権も制空権もアメリカ軍に握られ、それでも、なお本土決戦だとか、一億総玉砕だとか念仏のように唱え続けた市ヶ谷の大本営。
大本営の地下壕には要塞が作られていて、要塞の中では、本土決戦に向けての兵隊集めがパズルで升目を埋めるように、強引に決められていった。各県ごとに動員は熾烈を極めた。
もう、男であればだれ構わずに赤紙を送りつけた・・・日本が無くなる、国が無くなる、そんな末期症状であった。

岩手県下では、これだけの動員数を絞り出せとの命令が大本営で起案され県の組織に下達され、その中でも、特業と呼ばれる技能者の三人が本編の主人公。

兵役義務がある年齢ギリギリの45歳で動員された片岡直哉は、若いときに、あまりの近眼で兵役検査で乙種となり兵役義務が免除され翻訳出版社で編集長を務めている。彼は東京外国語学校を卒業していたことが決め手となった。

帝大医学部に籍を置く菊池忠彦は、岩手医専を出た医師で、兵役検査で赤紙逃れをする人たちに手を貸し診断書に手心を加えて特高のターゲットになったところを、帝大医学部に入学して、逃げることが出来たが、医師免許を持っていることが決め手となり出兵となった。

鬼熊と呼ばれる富永熊男は、すでに三度の兵役に従事してきた。戦地では輜重隊として果敢に攻めて、一番乗りで勲章まで戴いている地元の英雄である。三度目の兵役で右手の指を三本機関銃で撃たれてなくした。いまでは地元でトラックの運転手をしている。運転の技能があることで四度目の赤紙がきた。

本土決戦の前に、千島列島が攻められると誰しもが思っていた。
しかし、千島列島は火山列島で飛行場すら作れない凸凹した陸地だった。
日露戦争の講和で千島列島は日本領として明記された。・・・いまでは、ロシアに占領され返還のめどすら立っていない。
細長い日本列島は陸地こそ狭いが、そこには領海と云った線引きされた見えない領土が千島列島を含め大きく広がっている日本は、世界でも有数な領土を持っていたことになる・・・が、千島列島は帰ってこない。


南方にばかり目が行くが、日本の固有の領土である千島列島にも軍備が増強された。
アメリカ軍は本土侵略をする前に、千島列島を抑えにかかることは容易に想像できた。
千島列島の隣国であるロシアは、ドイツとの闘いで疲弊のうえに、日本とは不可侵条約を結んでいるので、よもやロシアが攻めてくるとは想像だに出来なかった。
毎日、偵察機を飛ばしてくるアメリカ軍が攻めてくると思われていた。

千島列島の国境に占守島(シュムシュ)と呼ばれる小さな島がある。平地であったがために飛行場が作られ北方最前線として考えられていた。北から攻めてくる本土決戦を占守島(シュムシュ)で食い止めようとした。

本土決戦は避けられないと思われていたが、先見ある下士官は、ロシアの仲介で講和が結ばれて戦争が終結するのではないかと思っていた。ロシア(ソ連)とは日ソ不可侵条約がありロシアが攻めてくるなんて露ほども思っていなかった。

ただ、ロシアは早々とドイツが降伏したので、戦力に余裕が出来ていた。不可侵条約はロシアにとっては格好の条約で、日本のことを気にしないでドイツとの戦いに全力投球できた。
日本が約束の文書に甘いことは先刻承知だったのであろう。

「終わらざる夏」上巻は、敵との通訳を担当する片岡、軍医の菊池医師、運転手の鬼熊の三人の生い立ちや、赤紙が来たときの胸の内やら、本土決戦を家族構成の一人ひとりの心模様が、こと細かく綴られている。悲惨な戦争の最前線にいて、死を前にした思いや行動は涙する。

8月6日。広島に原爆が落とされ9日は長崎にも原爆が落とされた。
終戦に向けてのカウントダウンが始まったが、三人の主人公は占守島(シュムシュ)にまだ上陸していない。

下巻では・・・。
8月15日に玉音放送があり戦争は終わった。・・・と、思ったが
ソ連は不可侵条約をを破棄して8月18日に北海道を横取りしようと占守島(シュムシュ)に
攻めてきた。 戦争は続いていたのです。

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