« ねんねこばんてんの女の子! | トップページ | 送り火 »

どでかいやつ

Michio

ホラー作家の道尾秀介氏のエッセイ集「プロムナード」の中に「二十年前の完全犯罪」と、云うのがある。作者本人が小学校四年のころの話で、授業中に猛烈な便意に襲われ、手を挙げて「先生!トイレに・・・」が、云いだせず一刻一秒を争いながら冷や汗を流していた。ついに我慢の限界となり、ついには教室内にぶちまけてしまうギリギリで先生の許可をもらう。
お尻に力を込めて、ゆっくりと、そして爪先立ちでトイレに向かう。 そして教室に戻り、排便してホッとひと息を付いたときに、--------あれ、まずい!。 顔から血の気が引く。

こんなくだりがある。

もう一度席を立つことなどできない。チャイムが鳴ってから、急いでトイレに駆けつけても、誰かほかの人間がすでにあれを見つけてしまっていたらおしまいだ。僕は途方に暮れ、顔に両拳を押しあてたり、今日で終わってしまうかも知れない自分を振り返ったりしはじめた。

落ち込んだ作者はこの後に啓示にも似たアイデアがひらめく。

振り向きざまに後ろの席に座る友人に
「さっき、すごいものを見つけた。誰か、流していかなかったやつがいるらしい」
「うそ?」
「ほんと。どでかいやつ」
とある。

その噂は閃光のように広がり、チャイムと同時に教室から脱兎のごとくトイレに向かう友だちがいる。
目的地には、残された「どでかいやつ」を眺めることになる。
究極のアイデアで、難を乗り切った作者は、まさか自分の便が多くの人に晒されるとは思わなかったでしょうし、どんな気持ちだったのか あ~俺のが・・・

そして、作者は述懐する。
第一発見者をまず疑えと云う、犯罪捜査の鉄則は、ほんとうだと。

残された「どでかいやつ」に、遭遇したことが度々あった。
社会人になり、3年おきに強制的に行われた山中湖での実務研修に参加したときのこと。
本社・支社・営業所から多種多様な人種が参加したこの研修は、同じ会社に務めながら、一度も話をしたこともない人との組み合わせで6人がワンセットで総勢6~70人ぐらい来ていたように思う。

お互いの自己紹介と挨拶をおこない、まずは研修のプログラムを確認して、それでは和気あいあいと行きましょう・・・と、相成った。

研修会場には、グループごとにテーブルが分けられ先輩諸氏にガンガンとしごかれる。
恐怖に似た精神的圧迫が続く・・・永遠に続くかと思われた。
その中でも、女性の先輩にしごかれるのは辛い。虫けらのように扱われる。

食欲が失せ、放心状態で部屋に戻る。この繰り返しで4泊五日の研修が始まります。
6人ひと部屋の大部屋での生活は、まるで生気を失った人間の集まりです。

ある出来事に遭遇するのです。
トイレに入ろうとすると、流し忘れた「どでかいやつ」が鎮座しているのです。誰なんだろう・・・
他にないので、水を流し、「どでかいやつ」を消し去ります。
そして、次の日も・・・次の日も・・・

私が見たのは2回だけ。一緒にいた支社の男が1回見たと。
誰か分からないので、「どでかいやつを流さないのは、誰だ!」とも云えず、また、「どでかいやつ」があるかも知れないと思うと、トイレのドアを開けるのを緊張する。
でも、誰だったのだろう・・・。
心の中では、みんな、あいつだな!と、思っていたんでしょうね。
私も疑われたでしょうね
何十年も経ったいまでも疑われていたら、嫌だな~。違いますよ!決して私ではないです。

研修を仕切っている総務にいる友人に聞くと
研修中に「どでかいやつ」を残す人は結構いるようです。ストレスの極限状態なのでしょうね。
認知症が近づいてきている私は「どでかいやつ」を残す日々も近づいています。


|

« ねんねこばんてんの女の子! | トップページ | 送り火 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ねんねこばんてんの女の子! | トップページ | 送り火 »