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居候のおっかけ・・・

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居候、三杯目はそっとだし とあるが。

チーフと呼ばれる彼は、二十年来の友人で二人目となる待望の赤ちゃんが7月に産まれる
彼は誰もが住みたくなる伊豆稲取の出身で一流のコックを目指して、高校を卒業と同時に上京しパレスホテルでコックとしての修行を行って来た。
ある縁で、三顧の礼をもって請われたが悩みに悩んで、そして、それも雪深く寒い戸隠のリゾートホテルの玄関をくぐった。

基礎スキーのメッカと云われる戸隠スキー場には、日本を代表する基礎スキーの王者たるデモンストレーターが腕を磨くためにこぞってお見えになり技術を磨いている。レベルの高いスキー場なのです。
スキーのシーズンともなるとホテルは繁忙を極める。双眼鏡を片手に野鳥観察に精をだしていたチーフも寝る間を惜しんで今日のメニュー、明日のメニューと忙しかった。

この冬だけ忙しいホテルの運営を助けるために、画期的な手法を用いられホテルの経営は上手く回っていた。その手法とは・・・。

□■スキー場の居候制度 □■

スキー業界における居候とは スキー場内外のペンション ロッジ 民宿や飲食店などでお手伝いをする代わりに そこでリフト券を借り受け 暇な時間帯にスキー場にいき練習をすることができる。
特に、基礎スキーの腕をあげバッチテストで1級取得を狙う学生には魅力的な手法です。

基本的には無給ですが、現地での食事、宿代、リフト券代などを考えれば出費がないので、この関係が成り立っている。

居候とはいえ 多少の小遣いをもらっている人たちもたくさんいる。
ホテル側でも 無給で働いてもらえるので大変助かるという相互関係が成り立っている。

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居候はスキーの技術を会得するがむしゃらに練習に励み、大学対抗のスキー技術選に向けて気合が入ります。・・・大学の名誉がかかっているのです。

チーフが切り盛りするホテルも住人ほどの居候が大部屋に住み、朝な夕なの食事時はエプロンを身につけ走り回っていた。ホテルの従業員そのものの姿です。

隆盛を極めたスキー場もリフト待ちがなくなり、ホテルにも閑古鳥が鳴き始め
料理が美味しいと評判だったチーフのホテルも例外なく客足が減ってきた。

チーフが来て5年経った頃にホテルのオーナーから呼び出しがあり、ホテルの休業が伝えられた。仕方のない結論だった。赤字が続き倒産間近であったが休業そして解散となってメンツは保たれた

蕎麦に熱心だったチーフは伊豆に戻ることなく、蕎麦打ちの勉強をするために、美味しいと云われる蕎麦屋に住み込みで働きにでた。

あれから六年が経った。

チーフが仕切っていたホテルで居候として働いた京都大学二回生の学生がチーフにひとめぼれ。カチッと運命の歯車が動き始めた。チーフのいたホテルが閉館になっていることを知らなかった彼女は、チーフのいたホテルが閉館していてショックを受けた。それでも学生の間は、毎シーズン居候として他のホテルで働いて、チーフを探し回ったが、チーフの所在が消息不明で意気消沈していたらしい。それでも諦めきれなくて、居候で来ては、スキーそっちのけでチーフを探した。

京都大学を卒業して市役所に就職したが、チーフのことが忘れられなく2月になると有給休暇を取得してチーフを探したと云います。

チーフが住み込みで蕎麦屋で働いているよ!と、聞いたときは涙が出て止まらなかったらしい。
会ったときは嬉しさのあまり体が震え、大声で泣いた。
そして・・・
「私のことを覚えていますか・・・」
「覚えているよ!○○さんだよね」
「はい! 嬉しい・・・やっと会えました。」
「私はチーフのことが大好きです。付き合っていただけますか?」と、
チーフは頷き、付き合いがはじまったが、給料は安いよ!と、念を押すのを忘れなかった。

夢が叶った彼女は、市役所を退職しチーフのもとに引っ越してきた。
まだ、蕎麦打ちの職人としては半人前だと公言するチーフは、お得意さんもたくさんいる立派な蕎麦打ちの職人です。

結婚式も挙げずにひっそりと二人だけの世界を作り出し、蕎麦名人への道を歩いています。
会ったことがありますが・・・可愛いお嫁さんなんです。
あれから三年。すぐに長女が生まれ、幸せの中で二人目が授かった。
喜ぶチーフの声は弾んでいた。

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