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神は私を見捨てた

Vitz

すでに2メートル以上も積み上げられた雪の壁で旧国道を往来する車の音は雪に吸収されて静かだった。それでも、ネオンの消えた夜の10時を過ぎると往来する車は極端に少なくなる。この時間帯から深夜にかけて活動する除雪車が主人公となる。

その夜も、10時に仕事を終えた彼女は、深々と降り続ける雪をみあげて、また積もりそうだな・・・とため息をついた。駐車した車にかぶった雪を払うことを考えると、まったく嫌になっちゃう。と、思ったという。

車のエンジンをかけて道路に出ようとすると、雪の壁がじゃまになり左右が確認できない。車の往来がないことを祈りながら、慎重に注意深くノロノロと車の先端を道路に出す。ようやく運転席から左右が確認できるとハンドルを切って自宅方面に車を走らせた。

雪の日のいつもの光景です。

降り続く雪でワイパーが激しく動き、ワイパーに負けじと必死にへばりつく雪は飛ばされないで窓に付着し雪の塊となってフロントガラスの小さな氷山となって形を変えていく。

車の往来が少ないからっと云って、いつ何時に、雪の壁の隙間から突然に車が飛び出してくるかも知れないとの恐怖を感じていた。

その瞬間は・・・
やって来た。

時速30キロ~40キロで走行していた。
突然、黒い車が雪の壁で遮られた隙間から現れた。それも大胆にも大きくはみだし飛び出してきた。目の前に現れた黒い物体に、運動神経の良さが発揮されたようで・・・

思いっきりブレーキを踏んでしまった。(ブレーキがロックされてしまった)
雪道走行での急ブレーキは命取りです。・・・、あとは野となれ山となれ・・・で、制御不能に陥った彼女の車はブレーキをかけたにも関わらず、氷と化した雪道をスピードをグングン増してカーブを描いき対向車線に飛び出して行った。

いつもなら、夜の10時過ぎ対向車線に車なんて走っていないのに
この夜は、チョット事情が違った。
旧型であるがトヨタマークⅡが視界に飛び込んできた。
減速することもなく、彼女の愛車は人間魚雷となってマークⅡめがけて体当りしてしまった。

車は大破です。
修理が出来ると云う範囲を超えてしまい、スクラップとなって運ばれた。
メチャクチャになった車のドアをこじ開けて彼女は出てきた。
それも無傷で・・・
不幸中の幸いと思うしかない。

対するマークⅡはと云うと、ボンネットは捲れ上がりエンジンから白煙が猛々と噴き上げている。自力では動かすことが出来ないほどの重症を負ってしまった。
結果として廃車になった。

2台をマジックのように一瞬のうちに廃車にしてしまった。
みごとな雪の手品です。

警察への事情聴取に保険会社への連絡・・・そして、なによりも代車の手配をおこなった。時計は深夜0時をとうに回ってしまい。ほとほと疲れてしまった。

時計の針を戻すこと3年前。

彼女は新車を手にした。ピカピカに磨き上げられたトヨタ・Vitzを見て満足であった。
中古車ばかり乗っていたので、久しぶりの新車に有頂天だった。
丁寧に・・・乗らなくちゃ!と、心に決めた。

そんな時に友人から、新車なんだから車のお祓いを受けた方と良い!と、云われ、そうだね。事故らないようにお祓いを受けよう!となった。

車のお祓いでは地元では、有名な神社に行ってお祓いを受けることになった。
境内に車を置いて、神装束に身を包んだ神主が祝詞を上げ、御幣で車の隅々まで撫でていった。もうこれで、この車は神の領域となって守ってくれると・・・思った。

お祓いが終わり、静かに頭を垂れて神主が社殿を昇るのを見ていたら、三段目か四段目で神主が大きく撥ねた。何かに躓いたのであろうか、コケてしまったのです。
笑うに笑えず、静かに見ていたが、転んだ神主を見て嫌な予感がした。

はたして、この車のお祓いは大丈夫だったのかしら・・・と。
友人は、このことを察して「神主がコケたことで、この車の悪い部分を身代わりになってくれたのよ」と、楽天的であった。そうであって欲しいと願った。

それから、半年後に災難はやってきた。
雨の降る朝、仕事にでかけようと車に乗り込んでワイパーを動かすと、キーコキーコと云って変な音がする。良く見るとワイパーのゴムの部分が無くなって金属だけのワイパーになっていた。誰の仕業だ!と思いつつも
「なに~これ~」と、思いながらも雨の中をワイパーのない状態でスタンドまで辿り着きワイパーを交換した。

そしていつかは

買い物で止めたショッピングセンターでは、鍵穴がこじ開けられドアノブが壊されて車上荒しにあって、車内がメチャクチャになっていた。バッグを置いていなかったのが、せめてもの幸運だった。

それから、半年もしないうちにフロントガラスが割られた。警察によるとこれも車上荒しの手口だと聞いた。

車のお祓いで神主が転んだことを冷静に分析すべきだった(笑)
とんでもない不運な車が私のところに舞い降りてきた。
おかげで、自動車保険で車両保険までつけることになり、保険が高額になることは辛い。

そして、極めつけは廃車の道へ直行する事故であります。
3年間、お祓いを受けたにも関わらずトラブル続きのこの車は廃車となって鉄くずになってしまった。
それでも、いつも、純真無垢なこの体が無傷であることが幸いでもある。

次なる車は、同じくトヨタのパッソ。
お祓いを受ける予定はない・・・断言された。 

お祓いを受けたことで、この程度ですんだと思うべきなのか悩むところです。

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