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NHK ラジオ文芸館 藤沢周平「秘密」

 

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NHK ラジオ文芸館で藤沢周平「秘密」を聴いたが肝心な場面で席を外し聴きそびれてしまったのでブックオフで探し新潮文庫「時雨のあと」に収録されている「秘密」を読んだ。
由蔵は代を譲って隠居生活をしている。
天気の良い日は切り石に腰をおろし日長な時間を過ごしていた。76歳になった由蔵は手足が衰え杖がないと歩くことも困難で耳も遠くなっていた。

その日は、代を譲った康次郎の女房おみつが髪を結ってくれた。由蔵は髪を結っている時にある女の事を思い出していた。

「あの女は誰だったのだろう?」

由蔵は思い出そうとするが、頭の中が混乱して分からなくなってしまった。
切り石に座りぼんやりと2~3間先を眺めていると、若気の至でたった一度の悪事を思い出していた。

由蔵は小さな筆匠鶴見屋で手代をしていた。
毎日、外回りに出かけお得意さまに注文の品をお届けに上がり、次の注文を頂いてくる。また新たな得意先にも精を出し寺院や画商をはじめお屋敷などを顔なじみになるまで門を叩き、筆や和紙の注文を貰ってくる。真面目な性格で主人や番頭の受けも良かった。

ひっそりとしたお屋敷に品物を届けた時に門番にいた中間に声を掛けられ、思いもかけない賭事に引き込まれた。
「お茶でも飲んでいかないか」と誘われ、喉が乾いていた由蔵は屋敷の一角で行われていた賭場に足を入れてしまった。見た以上はただで帰すわけには行かない!と脅され、花札を手にした。

賭事に負けた由蔵に反省はなかった。
由蔵は負けた悔しさが募り、外回りで時間を作っては賭場に足繁く通うようになった。
賭事に夢中になった由蔵は、住み込みの部屋に戻り丁稚奉公から爪に火を灯すように努力して少しずつ貯めてきた柳行李の中に手を入れてガックリとうなだれた。
貯めてきた3両もののお金が無くなっていた。

それでも由蔵は賭事に夢中になった。
3両を取り戻したい一心だったが由蔵にはある予感があった。
予感は現実となって現れてきた。

中間の辰平は由蔵を連れ出し凄んだ
「さぁ、性根据えて返事しろよ!」
「貸した金が、五両になったのは分かっているな!」
「出来ないことは分かっている!」
「鶴見屋に乗り込み主人に貰うだけさ!」辰平は笑い「明日までに支払って貰う!」と刻限を切った。
由蔵は黙ることしか出来なかった

借金までして博打を続けたことを今更のように後悔した。店に来られては困る。
鶴見屋を放り出され野垂れ死の人生が待っている。

刻限を切られた時間が刻々と近づいてくる
仕事が手に付かない由蔵は自分の部屋に戻ると天井を眺めていた。
悪意が芽生えた。今日に限って幸いにも主人が出かけた。

意を決して震える足を忍ばせて茶の間に忍び寄り、当座の資金が眠っている茶箪笥に手をかけた。五両を手にして梯子の方に歩いた時に確かに人影が目に入った。
確かに女だった。

「わたしは誰にも言いません。あなたも、私に見られたことを忘れてください」
と確かに聞いた。

女の声だと思いだしているのに顔を思い出すことが出来ない。
由蔵は女に見逃して貰った。

それからと云うものは博打とは縁を切り、今まで以上に仕事に精を出し三年後には働きぶりが認められ鶴見屋の婿になった。
ただ、当座のお金で五両ものの大金が紛失したのだから、大変な騒動があった筈であるが無事に乗り切ったことで由蔵の記憶から消えていた。

由蔵はたった一度の悪事を思い出しながら女の顔を思い浮かべた。
鶴見屋の婿になった由蔵の働きで鶴見屋は繁盛していった。夫婦仲は喧嘩もなく円満に過ごしたが16年ほど前に女房のお若は死んだ。

由蔵は死んだお若の事を思い出していた。
あの時、由蔵の盗みを見逃してくれたのは女房のお若だったのだとハッキリ思い出していた。お若は由蔵の盗みを誰にも云わずに由蔵に尽くして来たのである。

お若と夫婦になってお若に一度だけ云われたことがあった。
「あのとき廊下でチラッとみた女の姿がお若だった」と知ったが、今のいままで女の事を思い出すことはなかったが、たった一度の悪事でお若を思い出した。

夫婦仲が良かったのは、誰にも云えない二人の秘密があったことがあったのかも知れないと思った切羽詰って手を出した盗みをお若が秘密にしてくれた。仲が良かったのはお若が由蔵を愛していたんですね。

由蔵の人生をお若が助けてくれた。夫婦は二人三脚なんだと思います。

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友人の病名は「鬱病!」

胸がドキドキする
人間ドックに行こうかどうかで悩んでいる。
と云うのも3月に健康診断を受けた。

雪の降る寒い日に意を決して臨んだ市の健康診断の結果が郵送で送られてきたが、怖くて封を切ることが出来ずに1ヶ月が過ぎようとしている。
忘れていたわけではないが要精密検査で診察即入院が脳裏をかすめ封を開けずにいる。

タバコが体に悪い!と叫ばれてどれほどの年月を要したのであろうか。
喫煙者には肩身の狭い日々が過ぎていく
遂には風通しの良い倉庫までも手書きの「禁煙」の文字がデカデカと貼られた。自ら経営者であるが嫌煙を主張する社員の気持ちが禁煙の文字の大きさに現れている。

タバコはいつも止めたいと思ってはいるが、資金繰りを考えると発狂しそうになるので、何とかタバコでストレスを食い止めている。と本人談であります。

家庭の医学に当てはまる症状を挙げると片手で指を折っても追いつかない。
2年前から続く不眠症に加え、最近は肩こりが酷くなり手が上がらなくなってしまった。
卓球クラブに所属しているので毎週一緒にラケットを振るが、終わると肩が痛いとしかめっ面をする。傍目から見て肩こりなんてやさしい物ではないのかも知れないと思っている。

事あるごとに胸の動悸は激しく揺さぶるらしく。
最近では家で飲むビールの量まで制限されてストレスは倍増している。と嘆いている。

なかなか本人の意志でクリニックに行くことは難しいので
クリニックには行きたい素振りはあるので「水曜日どうですか?」と反応をみると
「水曜日は空いているので良いですね」と返事があった。一緒に行くことにする
まるで病院に行きたがらない子供の付き添いみたいなものです。

水曜日は待ち合わせ時間を決めて私が月に一回診察を受けるクリニックに足を運ぶ
心臓血管外科の循環器が専門だが内科・外科なんでもありのクリニックです。
待合室を見ると内科の患者が多そうに見えます。

彼の症状とクリニックの相性が良ければ良いのですが、動悸は心臓血管につながるが肩こりはどうなんだろう。まして不眠症の診断ともなるとどうするんだろう
などと堂々巡りの思いもあったが、先ずは名医と評判のドクターの判断に期待する。

診察を終えた彼の話を聞いて笑った。
動悸がする!云ったら脈を取りながら心電図を取りましょう となった。
次に肩こりが酷い!と云ったらエッ!肩こりですか?
ドクターが笑った。ドクターの笑いに誘われて看護師も口を抑え笑った。
肩こりですか?どうしましょうか。
形成外科を紹介しましょうかとなった。

極めつけは・・・
ムズムズ症候群の不眠症なんですが?
エッ!ムズムズ症候群て云うのは でドクターの口が止まった。
ドクターはムズムズ症候群を知らなかったようです。
不眠症も困りましたね。
これは心療内科の範疇かと思われますが、先生をご紹介しましょう
ムズムズ症候群と聞いて看護師は立ち上がるまで口を抑え笑いをこらえていた。確かにこのクリニックは心臓血管外科の看板が大きく掲げられている。

肩こりと不眠症は恥をかいたよ。
ドクターも看護師も笑いを堪えているんだよ 参ったよ!の弁に
でも動悸の検査で心電図はなにもなくて良かったじゃない 
まるで人ごとの私です。

後日、心臓血管外科ドクターの紹介状を持って心療内科を訪ねた彼から電話を貰った。
心療内科の待合室は超満員で、待つこと2時間ようやく呼ばれて行った。

肩こりと不眠症の関連性を述べた。
心療内科のドクターは聞き役に徹してメモをしている。
これは解決への糸口になるぞ!と期待した彼は、これでムズムズ症候群から開放されて熟睡出来ると喜んだ。

診察の結果がでた。
ドクターの口から思いもよらない言葉が発せられた。

病名は「鬱病です。」

エ~~~!
絶対に有り得ない病名を聞いた。前向きの自分から一番遠い病名が鬱病だと思っていたので目の前が暗くなり倒れこむように気が遠のいた。

現在彼はドンブリ一杯の薬を処方され飲んでいる。
まだ肩こりとムズムズ症候群は改善されていないが、薬のおかげか昼間に眠くなるのには困った。

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