« 藤沢周平から葉室麟へ | トップページ | 山本周五郎 「女は同じ物語」 »

葉室麟 秋月記を読む

Akidukiki

いつの世も財政難に直面すると周りが見えなくなる。
資金繰りは知恵を絞った騙し合いなのであろうか
豪商から捻出するにも、あの手この手の手練手管が要求される。

秋月藩も福岡藩から分離独立した小藩だが福岡藩がいないとやっていけない苦しい台所を抱えている。株式の51%を握っているのが福岡藩と云うことになっている。

秋月藩は苦しんでいた。
親藩である福岡藩にお願いすると、資金を融通したその日に秋月藩は福岡藩の管理下に置かれることは明白であった。

藩主はわがままである
藩主の意向を組み家老宮崎織部は長崎から石工を呼んでめがね橋を造ろうするも、失敗して多額の資金が流出した、それでもめがね橋に固執して再挑戦してめがね橋を完成させるが、秋月藩は破産寸前に陥った。

家老が元凶と家老排除に立ち上がった小四郎は仲間とともに秋月藩が親藩の管理下に置かれることを承知で事の顛末を上訴する。

株式の大半を握っている福岡藩は秋月藩に対して家老宮崎織部を引き下ろすが家老織部はその先を読んでいた。
親藩の管理下になって財政は良くなるであろう、しかし、指揮権が親藩に移り出向重役の顔色を伺いながら藩を立て直すことができるのかと疑問を持っていた。


高潔を求め分離独立に向けて小四郎は奮闘するも、親藩との蜜月を維持したい保守派との戦いが始まる。それまで仲間だった者は家老排除で重役に出世して我が身が可愛くなった。
秋月藩で殺戮を繰り返す親藩が送り込んだ伏影(隠密)との死闘もある
本藩に試されて「借り入れの交渉に行って来い!」と大阪に乗り込み豪商との駆け引きで借り入れに成功するが、賄賂を受け取ったら貸しましょうとの条件を受け入れる。

賄賂のお金は秋月に戻り重役に分配したことが、金をばら撒いて中老になったと陰口が広がる
その上、伏影を退治したことで伏影の仇敵になった小四郎は1対17の果たし合いに臨む。この時は仲違いの仲間が助勢した。秋月を襲った自然災害で窮地に追い込れ、仲間との溝が深くなり孤独になる

小四郎は自分が排除した元家老織部の胸中が知りたく織部に会う
織部は小四郎の働きを知っていた。

「ひとは美しい風景を見ると心が落ち着く、なぜなのか分かるか」

「山は山であることに迷わぬ。雲は雲であることは疑わぬ。人だけが、おのれであることを迷い、疑う。それゆえ、風景を見ると心が落ち着くのだ」

「小四郎!おのれがおのれであることをためらうな。悪人と呼ばれたら、悪人であることを楽しめ。それがお前の役目なのだ」

織部の言葉に小四郎は深く頭を垂れる。

小四郎を慕う詩人がいる 名前を猷と云う
詩人は悪人と呼ばれ評判の悪い小四郎を一緒に江戸に行きましょうと懇願する

「それにしても小四郎さまの評判は悪うございますね」

「それほど悪いのですか」

「はい、なんでも大阪の商人から賄賂をもらい、その金でご重役の歓心を買って、中老にまでご出世あそばしたとか、家老の地位を狙って、かって生死をともにした友と争い、昔の友情など踏みにじるおひとだと云うことです」

「なるほど、当たってないとも云えませぬな」

「どうして、大阪商人から金など受け取られたのですか」

「金と云うものは天から雨のように降ってくるものではない 泥の中に埋まっている。金が必要であれば誰かが手を汚さねばならぬと云われました」

「それで、ご自分の手が汚れてもよいと思われたのですか」

「どれだけ手が汚れても胸の内まで汚れるわけではない 心は内側から汚れるものです」

「汚れぬ心を持っておられるということですか」

「そうありたい、と思っていますが、さて、どこまでできるものか」

小四郎は秋月を襲った自然災害で藩に多大な被害をもたらしたとして中老を辞し隠居するが、こんなに苦しい時に藩主が参勤交代で使用する船が欲しいと駄々をこねる。この時ばかりは隠居の身でありながら断絶した仲間と共に藩主交代を本藩に上訴を試みるが、藩主に察知され上訴は失敗する。

高潔であっても正義が勝つとは限らない
岩倉具視の策略に負けたセゴドンはそう思ったのかも知れない。

|

« 藤沢周平から葉室麟へ | トップページ | 山本周五郎 「女は同じ物語」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 藤沢周平から葉室麟へ | トップページ | 山本周五郎 「女は同じ物語」 »