人間ウォッチング

二年六ヶ月の刑に処す。

冤罪ではない。
東京地裁に足を踏み入れた。

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静寂に包まれた法廷はそれぞれの思いが流れていた。せわしく書類に目を通す裁判官は、いまから読み上げる判決文が澱みなく読み上げられるように目で読み、時折り開始時刻を確認するかのように、顔を持ち上げて時計に目をやっていた。
下段に座る書記官はキョロキョロと傍聴席を舐めるように目を回転させ、人それぞれの人格評価をしているかのようであった。
50人ほど座れる傍聴席は私を含めて五人ほどであったが、閉廷になった後でも退席しなかったので次の法廷の傍聴が目的だったのかも知れない。

シーンと静まり返った法廷に2時25分、裁判官の口が開いた。あたかもヒソヒソ話をしているような囁く声で「判決を言い渡します」と、その瞬間は切って落とされた。
『被告人を懲役二年六ヶ月に処す。』3秒ほど間が開いた。辛い判決になったのか・・・ 続けざまに『刑の執行を三年間猶予する』とはっきりと聞こえた。
安堵した。
裁判官からの判決に至った事件のあらましが述べられた。悪質であった事が強調されたが、被告人である本人の真摯な反省の気持と証人として意見を述べた家族の強いきずなに動かされたむねが淡々と読み上げられた。
2時30分閉廷となり法廷を出るとがっちりと握手をした。

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東京地裁の隣にある法務省全景

全国ニュースでも取り上げられた商法違反であった。いちやく有名人に躍り出た。
ショップを運営している彼は会社の資金繰りを少しでも楽にする為にネットオークションに販売網を広げる形で参加した。深夜遅くまで商品のラインアップを考えていた。ネット販売のコツが独特な勘として身につくと一般からの仕入をショップだけに絞りこみネット販売は海外に仕入れルートを探り韓国・中国に渡航した。

誘い込むように魔手は伸びてきた。韓国でブランドのコピー商品を手にして持ち帰り、ネットで販売するとまたたく間に完売した。資金繰りが脳裏をかすめ、ほんのチョットした出来心が韓国から中国へと飛び火して、縫製工場から吐き出される偽ブランド品の歩留まりを買い込み販売した。利益率の良さが拍車を掛けた。
ネットの世界では目に付くようになりメーカーからの警告まで受けたが在庫品を処理するまでと変な安心感が裏目に出た。
中古であるが外車を乗り回すようになって反感をかったようだ。
密告とも呼べるタレコミによって、とある警察署のマークがついた。

その日は、蒸し暑い日であった。
いまにも雨が降りそうな雲行きが怪しくなった10時ごろ、インターネット専用の事務所に出社して偽ブランド品を手にした瞬間に警察の捜査が入り逮捕された。待っていたかのように
偽ブランド品を販売目的で手にした商法違反である。

朝夕、仏壇に手を合わせ、先祖を敬う熱心な宗教の心を持った真面目な彼は・・・
悪魔の囁きに乗ってしまった。
テンヤワンヤの大騒動が始まった。友人のひとりである私は、渦中の彼が戻ってくるまでショップで働くみんなと心配する家族へと微力ながらサポートに回った。
なにしろ、数あるパソコンを用意して、商品を良く見せるための画像修正の手解きやネット販売のイロハを助力したのは、紛れもなく友人である私であった。

罪を認め反省を示していたので罰金刑の略式であろうと高を食っていたが、検事の非情なる結論は起訴だった。留置されている彼に面会に行き、ただただ落ち込んでいる彼に励ましの言葉はなかなか出てこなかった。笑いを誘う雰囲気になれず、買い求めた本や雑誌を差し入れした。

後日談として・・・。読む時間はたっぷりある中で
差し入れた宮沢賢治特集は、暗くてより一層に落ち込み心が重かったと云われた(笑)

規定いっぱいの23日間の拘留を経て保釈金300万円で解き放たれた。
知り合いの弁護士を立てて裁判に臨み検事の求刑を聞いた。罰金の量刑がなかったことが想定外となり実刑に近づいたと読めた。
証人として証言台に立った奥様との二人連れは、暗くて長い道のりを歩いているようだったらしい。
公判が終わるとすぐに奥様から電話を戴いたが、肝心の本人は口が開けられないほどに落ち込み沈んでいると奥様から告げられた。
起訴状には私の名前が何度もでたようだ。その場にいなくて良かった。

それから二週間後の判決公判。
奥様は無情な姿を見たくないと判決を聞くのを避けられた。代わりに私がこの目でしっかりと見てくることになった。彼の心は、今までの人生でドキドキ感は常にあったが、これほどのドキドキは初めてだと、六大学の合格発表の時もドキドキしたが、それ以上のドキドキがあり、笑いを誘う私の言葉にも反応は薄かった。
トイレに行く回数が多くなり、居ても立ってもいられないことを証明していた。
もしかして・・・執行猶予がつかなくて実刑になったらどうしようと、拘置所が脳裏をかすめる。
罰金の量刑がなかったので有りえる話かも知れないと検索したネット上では書かれていた。
心臓のパクパクに拍車がかかった。
弁護士との打ち合わせを終えて115法廷に入った。
天国か地獄かの分かれ目の時間は刻々と近づいてきた。
・・・刑の執行を三年間猶予する」崩れ落ちそうになった彼を見つめていた。

奥様がとて気にしていた罰金の付加はなかった。300万は戻ってくる。
資金繰りが苦しい事情を涙ながらに訴えた陳述が効いたのかも知れない。
肩を組み懐かしい香りのする銀座に出た。
有楽町のスタンドbarに入り、生ビールと水割りで乾杯した。

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駐車違反でも、執行猶予は取り消されるよと脅迫しておいた。
反省に立って外車は売り払うようだ。

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悪路を駆け抜ける

山を切り開いて造られた高速道路の走る東側には鮫ヶ尾城の城址がある。上杉謙信亡き後の跡目騒動で陣を張った景虎は裏切りにあって妻子ともども自刃して果てた。
甘言に夢を抱き、見る目がないと言えばそれまでだが自己保身による裏切りは世の常として枚挙にいとわない。

鮫ヶ尾城址にほど近い平野を見下ろすこの地は、晴れた日には遠くには北アルプスの山々が見えるはずであるが・・・。
いつも霞がかかりぼんやりとした風景になっている、寒暖の差が激しいことを物語っている。
のどかな道に寄り添うように2メートル幅ほどの小川が流れている。
時代を遡れば、ひと昔前までは雪解けの清流としてメダカやクチボソが住みかとして泳ぎ、子どもたちの格好の遊び場ではなかったかと思われるが、いまでは小川の土手に雑草が生い茂り覗き込むことが憚れるが、雑草も景色と化している。
石で造られた橋を渡ると、左手には手入れが行き届いた花壇が広がり、雑草が刈り取られている。右に目をやると広い畑にはシシトウに長ナス、トマトにキュウリと丁寧に作付けされ、頭をタオルでギュっと絞った10人ほどの方が篭を手にして収穫に忙しい。

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大掛かりな味噌を作る設備が整っているワークスに顔を出す。
見慣れた自転車が目に付きました。
有名人です。
自転車の持ち主を探したのですが味噌工場に入っていて仕事中とのことで許可を得て自転車だけをカメラに収めてきた。
雨の日も、雪の日も彼は自転車に跨り、どんな悪路にも厭わずひたむきにペダルを漕いでいる。遠くは妙高の端の地区から車の往来の激しい国道をわき目を振らずに漕いでいる姿をよく目にする。
雪道を走る天才でもある。雪に馴れた地元の方も雪道での自転車は怖くて乗ることを避けるのに彼はひたむきに前へ前へと見据えて漕いでいる。
彼に始めて会ったのは、もう5年も前のことである。
かなやの里に仕事で出向いた時に、下の方から派手な看板を背負った自転車が近づいてくるのが分かった。
彼は笑顔で頭を下げると授産所の仕事場に向っていった。
その日から、屈託のない笑顔と動く広告塔として自転車の回りをチラシで埋め尽くした飾り物をいたるところで出会うことになる。

ある人は・・・。
こんなに真面目な子を見たことないと、どんなに雪が降ろうが雨が降ろうが、どんな悪天候でも自転車に跨り約束通りに仕事に来る。

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彼の働く「かなやの里」は。
見晴らしの良い高台にあり三つの棟に分けられている。
その中にある療護園には重度の障害を持ち在宅での生活が出来ない方が入所されている。更生園には支援を必要として、18歳以上で知的障害のある方が入所されている。伺うたびにラジオ体操のさなかで元気に体を動かし、笑顔で挨拶される方もいらっしゃる。笑顔の中に澄み切った目が広がり心が和む思いがある。
通って来られる授産所もあります。知的障害の受託施設ワークス。
畑を管理、収穫、販売を手がけるのは授産所のみなさんです。
「かなやの味噌」として味噌作りも盛んで県内の物産展でも販売されている。

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無我夢中を考える・・・。

梅雨の合間にはうだるような真夏日が襲ってくる。体中から滲み出る汗がことのほか気持が悪いので日陰を求めてプラットホームに立つ。
冷房車両が滑り込んできた。
いまは、どの車両も冷房車両のような気がするが、ひと昔前の山手線車両は冷房車両が少なく、冷房車両が来るとわれ先にと、乗るために押し合いへし合いの手練を駆使していた。

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新幹線を上野で降りて、山手線に飛び乗った。
上野駅では大量の客の入れ替えが行われ座れた。
微弱の冷房が効いた車内は居眠りがしたくなるほどの心地良さがある。

中央にある席の端に陣取ったのは、長年の閉塞した心によるためで、事が起きたときの咄嗟の行動、脱兎の逃げ足これに限る。小心者の哀れな心理の表れである。

座るや否や前の席に座っている人が目に入り気になった。
年のころなら32~3歳。いま流行の中途半端に伸びきった口ひげとあごひげを蓄えている。
顔の割には唇が薄くて小さいのが気になった。吝嗇で気が弱いが見栄を張りたがる人なのであろうかと、勝手に観相学を始めてしまった。
膝にはメタリックボディで12.1インチのpanasonic let's noteは開かれていて、PCIスロットにはウイルコムの通信カードが差し込まれ接続を示す緑色が点灯している。

何を眺めているのであろうか、半開きになった眼は虚ろに現実を逃避しているようにも見える。目が宙を泳ぎだし顔が揺れ始めた。半開きになった眼もいつのまにか閉じられ、持ち前の探究心であろうか、誰も入り込めない夢の中に探検に出かけられたようだ、顔が傾いたまま止まってしまった。開いたlet's noteの中では動画が勝手に動いているのかも知れない。動画を見ている最中であったなら、肝心のところを見逃しているに違いない。
そのうちに、膝に乗せたlet's noteが膝から落ちるのではないかと心配になってきた。
電車の振動で少しずつlet's noteが動いているようにも見える。
次の動作に備えて、抱きかかえていた無印で買ったトートバッグをそっと足元に置いた。let's noteが落ちてくるのシュミレーションしている私がいる。

周りを見渡すと、中央の席に座っている6人の方はlet's noteを開いて居眠りされている方を除く5人の方はめいめいの携帯を取り出して夢中になっている。誰も入り込めない世界を作っているそんな感じ。

let's noteの隣に座るアキバ系ファッションに身を包んだ女性がいる。脇目もふれずに右手に持った携帯を器用に親指がせわしなく動いている。もしかしたらアキバ系ファッションは隠れ蓑で山手線車両を書斎代わりにしている凄腕のライターではないのか。
いや、もしかしていま流行の携帯小説を書く小説家なのかも知れない。あの著名な「きっこの日記」のきっこ本人の線も考えられるが、ほんとうにそうだと面白い。

その右となりに座っている30代のサラリーマン諸氏も携帯を眺めている。
携帯を持つ指先が動くことはないが、携帯画面を凝視している。もしかして出会い系のメーリングを読んでいるのかも知れない。

メーリングリストがインターネットの主流であった時期があった。niftyのパソコン通信がフォーラムと名称を変えて広く浸透していた。この時のフォーラムはオフ会が盛んでどこを覘いてもオフ会で盛り上がっていた。
いまはオフ会なんて死語なのであろうか。

出会い系を覘いている彼の右となりには赤い紅をした40歳台の主婦のように見受けられる。この女性は買い物帰りなのであろうか松坂屋の紙袋を提げている。紙袋を器用に懐に抱えながら携帯画面を覘いている。
日々の生活が思いもよらぬ重圧から来るストレスを抱えてバイト先の若い男とねんごろになった事が考えられる。
彼からの長い長いエロいメールを読んでいるのであろうか。携帯から目が逸れることはなかった。

ひとつ席を置いた右隣には、ヨレヨレのスーツを着込んだ50歳台の夕暮れ時が似合う男性が座っている。会社の重要な書類が入ったバッグは荷物棚に放り込み、両手で持った携帯に必死にしがみ付いている。百歩を譲っても、この男性にloveメールが来るとは信じ難い。この方が似合うのはアダルトサイトの投稿画像に添えられているお誘い文章を読んでいるように思える。
年恰好で、その方の人生を否定してはいけないが、アダルト以外になにがあるのであろうか・・・私も携帯を眺めていたら100%の確率で、同じことを思われるのでしょう。否定出来ない私がいます。

右端には20歳代と思しきサラリーマンがお二人。
このお二人も携帯から目が動かない。何をみているのか不思議でならない。
着こなしを見るほどに
先入観であろうが、このようなサラリーマン諸氏を見ると、高額収入を謳い文句で集めたノルマの厳しい先物取引の社員ではなかろうかと思ってしまう。
サルバドール・ダリの作品のように、また魔女が履いてそうな先が尖るだけ尖った靴を履いているのを見ると、まともな営業中とは思えない。
先入観ではあるが・・・。

let's noteを抱えた彼は大塚で目を覚まされた。
そして周りをキョロキョロしながらlet's noteを閉じられた。d(゜-^*) ナイス♪キャッチを目論んでいた私はファインプレイの機会を逃してしまった。

文庫本を取り出して読み始める人がいなくなった。
これも世の流れなのでしょうね。携帯の小説は読めるが、本の小説は読めない
なにかが狂っているのかも。

画像は鉄道マニアのページから拾ってきました。

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120%の力をだしつくせ!

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「120%の力をだしつくせ!」

ある小学校の運動場に出入りする壁に書かれているスローガンです。
叱咤激励と云うより、部活で仁王立ちになりながら唾の噴霧を部屋中に飛沫させながら檄を飛ばすスローガンでしょうか。
口角泡を飛ばすのはもちろん先輩か、血の気の多い若き先生か。
120%とはどの程度の力なのでしょう
それに「・・・だしつくせ」とは。「・・・発揮せよ」ではいけないのか
出来ない事を理解したうえで無理難題を押し付けているようにも感じますがね。

血と汗でのた打ち回って、成し遂げた喜びが120%の達成感なのでしょうか。
小学生って、ここまでしごかれているのですね。
一時、もてはやされたスポーツ根性物語を彷彿させます。
しごきがトラウマになってスポーツ嫌いにならなければ良いのですが。それでなくても日本のスポーツに関する土壌は、弱いことを分かっていながら、おだてるだけおだてて、周りに期待させます。
しかし、おだてられても期待に添えないのが分かるのは本人だけのようです。
本人は辛いでしょうね。

東京オリンピックでオリンピックの最終日は、日の丸を背負った自衛隊の円谷選手です。メディアは期待するだけ期待して、金メダルが取れないとみるや一気にトーンが下がり、そっぽを向いてしまいました。世間の冷たさが身に沁みて、余りの落差に押し潰され自ら命を絶ってしまいました。

気が弱いためにスポーツは観戦を専門としている私は痛みの伴う制裁は逃げることだけを考えますが、知らず知らずのうちにしごきの世界へと導かれ泥沼に入ってしまったことがあります。

始まりは・・・。
夜の点呼のあとに起こりました。
学業を優先させることを目的に別名座敷牢とも呼ばれる寄宿舎に押し込められたのは、寺子屋に入った15歳の春です。
10畳二間の四号室に部屋割りされた。先輩を入れて総勢6名の小さな仲間です。
自己紹介したりの和気藹々で過ごしたのは、入って三日間でした。
四日目には、点呼のベルが鳴らされ、遠くから先輩の怒声が聞こえます。

「二年・三年幹部室に集合!」と。
四号室の先輩も支度して出て行きました。なにやら不吉な予感です。
数分の後に、静まり返った中から大声で「一号室から1人ずつ七号室に来るように」と命令が下されたのです。
その声を聞いた瞬間から、とつぜん足の震えが始まり心臓がパクパク大きく鼓動し始めたのです。今にも死にそうで死にそうで・・・。
逃げたくなった瞬間です。 
そのうちに、殴られているような音まで聞こえてきます。
絶体絶命で命の保証がされないようです。

やはり時間は止まってくれませんでした。
順番どおり、お迎えの時間がやって来ました。
足の震えは、よりいっそう激しく大きくなっていきます。
傍から見ても、ズボンの裾が大きく揺れているのが分かります。もう泣きたい心境です。

部屋に入ると、居並ぶ先輩の顔が鬼瓦に見えます。
すぐに、寄宿舎の規則と挨拶の有無が質問されました。薩摩弁が不自由な為に、すこしやさしく質問されたのは助かった。
これで、退散かと思った瞬間に右頬に鉄拳が飛んできました。
目にも留まらない速さです。クラクラと目から火花が散りました。
気合の為の一発だったと云うことでしたが、鉄拳がトラウマになった瞬間です。

学期末ごとのテストで席次がひとつでも下がれば鉄拳が待っていることを約束させられたのです。もう、大変なところに来てしまったようです。
鼻血こそ出しませんでしたが、顔が大きく腫れ悔しくてその晩は寝れなかった。

幾度となく受けた鉄拳の嵐、まさに地獄の1年間だったが、2年になるといくぶんか天国が待っていた。鉄拳を振るう先輩が進路問題でそれどころではなくなったのだ。
殴られるのが嫌で嫌で必死になって徹夜してまで頑張ったテスト前夜。
2年になると、鉄拳を受けた熱いほとばしりも咽喉元すぎて忘れてしまったようです
成績はみるみる落ちていきました。
目指せ○○大学のスローガンも色褪せて破けてしまいました。

平和が良いですね
鉄拳と聞くだけで足の震えが脳裏をかすめる。

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出生届け

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今日、あるニュースを探すためにローカル紙を隅から隅まで探していたら
面白い記事に出会いました。

22日~25日出生届。

① 未波     みなみ
② 尚人    なおと
③ 珠花     しゅか
④ 悠斗     はると
⑤ 蓮夏     れんな
⑥ 紗耶     さや
⑦ 愛叶     あいか
⑧ 煌希     こうき
⑨ 悠陽     ゆうひ
⑩ 心結     みゆ
⑪ 奏空     そうすけ
⑫ 凛桜     りお
⑬ 陸斗     りくと
⑭ 拓睦     たくむ
⑮ 翔和     とわ

可愛い赤ちゃんに付けた名前です。当用漢字として何人まで正しく読めるでしょうか
最近は漢字ブームで、難しい漢字ほど人気が高いようにも感じますが・・・。
単語登録でもしない限り、変換では一発で表示されないでしょうね

はたして、将来的に子どもが喜ぶ名前なのか、不思議な感じです。
ずいぶん前に、惡魔で出生届をした馬鹿な親もいましたが。

男が産まれました。3200グラムの元気な赤ちゃんです。
出生届は1ヶ月ほど余裕があるだろうと高を食っていたのです。
実家から、姓名判断の大家から良い名前を戴いたと云って、五つほどの名前を書いた手紙が届いた。覚えているだけで
「輝年」「寿之」「公寿」あとは思い出せない。
そんなに拘っていなかったのと、仕事が立て込んだせいもあって後回しにしていた。寿之が良いかなと思っているうちに二週間が優に過ぎ去った。

そろそろ区役所に行かなくてはと思っている矢先に田舎から電話が入ったのです。
出生届を出した?
まだ、出してないけどと云うと、良かった・・・。
姓名判断を得意とする霊能者から、これに決めなさい!と云われたと云ってきた。
『和範』
次の日に、慌てて区役所に届けに行った。
すでに、生まれて1ヶ月が経とうとしていた。

区役所では、えらい剣幕で捲くし立てられ、
出生届は二週間以内と決まっていると・・・ペナルティの罰金がつきますよと笑いながら怒られた(笑)
二週間以内を守っていたら『和範』の名前は付けることが出来なかった。

名前は不思議なもので、和範と決まるとすぐに、知り合いの四柱推命を勉強している友人から、和範に関する将来の指針が送られて来た。これが運命なのであろうか・・・。
和範はたいしたことがなくても、和範の子どもに偉い人がでるようです
はははは、それは私の孫となるんですね。
私は、偉い人を輩出するためのDNAを継承する中継ぎ人のような感じです。

本人曰く、結婚の意志はまったくないそうです
一生結婚しなくても良いとさえ云い切ります。
ま、これもまた、四柱推命に現れない運命でしょうね。

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大雨・・・あの日の事が蘇る。

   

ビリー・ジョエル「The Stranger」を聴くと、あの日の事が蘇る。
その日は午後から雲行きが怪しくなり、夕食を過ぎた辺りから強風を伴った雨が窓を激しく叩き、あたかも台風のお出ましで雨に取り囲まれ周りから取り残されたような静かな空間が部屋に漂っていた。
こんな日は車の運転するには面倒だ。外に出ないようにしよう・・・。
雨は一向に止む気配はなく、前にも増して雨音は激しく音を奏でているまるで台風の夜にロウソクに火を灯し楽しんでいるかのようだ。
しかし、戸を閉め切った部屋の中は、座っているだけで体中の毛穴から汗が噴出してベタベタして蒸し暑い。明日も雨で通勤渋滞がよりいっそうの渋滞に巻き込まれる事を考えただけで憂鬱になっていた。そんな不安が頭を過ぎり早々と床に就いた。

眠りは得意とするので眼を瞑るとすぐに夢の世界に飛び込み楽しんでいた。
午前2時。静寂さは掻き消され、激しく打ち鳴らす雨音に呼応するかのように、けたたましく電話の音が鳴り響き叩き起こされた。

寝惚け眼で受話器を取ると栃木県佐野市に住む友人K氏からだった。
「寝ている時に悪いですね」
「大至急のお願いがあるんです・・・。」
眠い目を擦りながら「はい!久しぶりですね ・・・で、何でしょう?」
「練馬に住む彼女が自殺しそうなんです」
「連絡が取れなくなってきているのです。・・・見てきて欲しいんです」
「自殺」の声を聞いて眼は完全に醒めた。
「先ほど、電話が入って今から自殺をしますと云って来たんです」
それは、大変だ。
住所とある程度の場所と建物の特徴を聞いてメモすると着替え、土砂降りの雨の中を出かけた。こんな大雨の日には運転したくないと思っていたが、事は急を要した。

雨は小降りになる気配もなく、だんだんとひどくなり強い雨となっている。
ワイパーの速度を早くしてもフロントガラスを叩く雨を消す事が出来なく視界が悪く、焦る気持ちで練馬方面に向かった。
聞いた地図を頼りにアパートの色や建物の形を探して、電信柱に貼ってある番地表示を確認した。
「ここだ 間違いない」
アパートの玄関を入り、聞いた1階の部屋を確認してノックするが応答がなく、隙間から漏れてくる明かりも消えている。もう死んでいるかも知れないとの不安が脳裏をかすめる。激しく戸を叩いても何の反応もない。
降りしきる雨の中をアパートの裏に回り、閉め切っている雨戸を確認すると、車に戻り工具箱からドライバーを取り出し、雨戸をこじ開けた。
雨の音で戸をこじ開ける音が消されて幸いした。
ずぶ濡れになり、まるでジョージ秋山氏が描く「アシュラ」のようであった。

雨戸を外し、中に入ると部屋は真っ暗で物音ひとつしない。
手探りで灯りのスイッチの紐を探して引っ張った。
パッと明るくなった部屋の片隅に横たわっている彼女を発見した。
睡眠薬であろうか、空になった瓶が転がっている。
台所に行き、洗面器を持ってくると彼女を抱きかかえて無理やり口を開けると指を突っ込んだ。咽るとすぐに咽喉が鳴り嘔吐した。
洗面器の中は白い液状の固まりで溢れかえった。
我に返った彼女は気が付き泣き始めた。
自殺したい理由はうすうす分かっていたが改めて聞く事はしなかった
ずぶ濡れになった私を見て、声を上げて泣きじゃくり、体が震えている。
風は止み雨音だけが聞こえてくる蒸し暑い夜、彼女はガタガタと震えていた。
コップに注いだ水を何杯か無理やり飲ませて
「大丈夫かと聞いた」
「はい もう大丈夫です Kさんに聞いてきたのですか?」と聞いてきた。
「ウ・・ ウン(._.;) 電話が掛かってきたんだ」
「来ては悪かったかな?」
「いいえ・・・ありががとうございます」
鳴き声であったが、しゃくりながらはっきりと応えた。

ずぶ濡れの私は彼(K氏)のT-シャツを借りて着ていた。
まだ安心出来なく、その後が心配なのでベッドの横に並んで座り、まんじりともせず朝を迎えた。コーヒーを作り、元気を取り戻した朝に経緯を聞いた。
「もう考えるのが嫌になった」大好きなビリー・ジョエルの「ストレンジャー」を聴きながら死にたかったと云った。
ベッドの上に置かれたラジカセの中にはThe Strangerのカセットがセットされていた。
「聴いて良い?」朝聴くThe Strangerは雰囲気が違って聞こえた。
いろいろとあった二人だが、その後は紆余曲折を経て結婚した。いまは栃木県佐野市に住んでいる。

忘れ得ぬ曲としてThe Stranger。この曲を聴くたびに友人と奥様の顔を思い出す。
そして、ずいぶん前に聞いた芸能ニュースであるが「今日でお別れ」を聴くと
湘南の海岸で「今日でお別れ」をエンドレスで流しながら海に入っていった11PMのモデルを思い出す。何年経っても、なぜか心に引っ掛かっている。

私と云えば、The Strangerも良い曲だと思うが、なんと云ってもhonestyが大好きです。多分に正直な性格なのでしょう・・・私は(爆)

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人間ウォッチング

2006_06_25_0210001

雨が降り続き、少し肌寒い日であった。
ごったがえする東京駅の新幹線ホームで上越新幹線 二階建て車両のトキに乗り込んだ。いつもは混雑する時間帯であったが、水曜日と云うことであるのか、意外と空いているようだ。
早々と乗り込み、指定席に座り新聞を広げて発車時刻を待ちながら、フッと窓の外に目をやると遠目にも重い荷物を持って肩で息をして、息切れ寸前で駆け込んで滑り込みセーフ!の方が入って来られた。
その方は、大きなアタッシュケース2個に三越の紙袋には、はちきれんばかりの書類を入れ、尚且つ、ショルダーバッグを肩に掛けて同じ車両に乗り込んで来られた。
そして、私と同じ列の反対側の席に着かれた。

通路を挟んだ列に陣取った私は、肩で息する紳士に興味が湧き、読みかけの新聞を読む振りをしながらフクロウの目の様に大きい眼を右側に寄せて、見入ってしまった。新聞紙が盾になり横目でのウォッチングは目が疲れるが、しかし、面白い光景だ。

席に着かれたその方は、時刻どおりに新幹線は動き始めると、空いている隣の座席に重いアタッシュケースを置かれた。まるで、その方は車内の小さな書斎であるかのように落ち着いて書類を紐解かれて仕事が始まった。

やおらアタッシュケースから書類の束を掴みアタッシュケースの上に重ねられた。
上着のポケットから色鉛筆やサインペンを取り出され、いかにもスタンバイOKの合図のような仕草であった。

アタッシュケースの上に乱雑に置かれた書類の一片が散らばり横文字が見える、横文字に弱い私は横文字を見ると得も言われぬ脳が刺激され、クラクラと眩暈がする。
英語であろうと・・・英語で書かれた書類の束を掴むと座席の前の小さなテーブルに置いて、1枚1枚確認するも一瞥して判断され、不要なものは、その場で破っている。
破った書類をコンビニの袋に無造作に詰め込むが書類があっちこっちに散らばってしまっている。
一心不乱に、書類の1枚1枚を手に取る素早さと、処理するスピードは見事な手捌きである。慣れた手つきとは、このような事を云うのであろう・・・。
束ねた書類を横の座席に積むと、レポート用紙らしきものを取り出しテーブルに置き、書き始めた。頭を掻きながら書いている姿は、髪を振り乱して書く奇人変人として評価の高い小室直樹氏を彷彿させる。
もう、座席の周りは英語の文字が溢れて目茶苦茶だ。
アタッシュケースは二つとも口が大きく開けられ、書類が散乱している。

遂には、期待の三越の袋に手が掛かった・・・何が入っているのかとても気になる。
はちきれんばかりの袋からは英字新聞が取り出された。凄い量の英字新聞。
見て読むのが早いのか、破っていくのが早いのか・・・破られた新聞の紙片は宙を舞い紙吹雪となり床に散らばっていく。
書斎と化した座席は、目に見えない赤外線が張り巡され人を寄せ付けない。
この方は・・・どこまで行かれるのか

次の停車駅で指定席の方がお見えになったらどうするのか、人事ながら気になった。
幸いにも上野・大宮・高崎と順調に席は埋まらず安堵した。

どうやって片付けられるのか興味津々であったが、私の下車する越後湯沢駅が近づいてきたので人間ウォッチングも消化不良で終わりそうだ。
ところが・・・。
車内アナウンスが流れると、先生と思しきヨレヨレの紳士は、急に立ち上がり、小さな座席の前のテーブルにアタッシュケースを置くと、散らばった書類を集めて、無造作に詰め込んで行かれる、それも凄いスピードで整理が始まった。
飲み干したペットボトルも一緒に詰め込み蓋の閉まらない厚みになった。
「あ~~~蓋が閉まるのか」と思った瞬間!
押さえ込んだ反動で蓋が大きく反り返り、無造作に詰め込まれた書類が投げ出され空中で踊り始めた。
前にも増して、目にも留まらぬスピードで散乱した書類を拾い上げると、悲鳴を上げたアタッシュケースに詰め込み、閉じていかれた。
座席に散らばった大量の書類・英字新聞は、もう要らないのであろうか。
足で座席の下に押し込まれた。散らかした後始末は、次に座る方へと移管された。
越後湯沢駅に停車するや否や、少しは軽くなった書類のケースを肩と手に持ちながら、人混みに揉まれるようにして降りて行かれた。
越後湯沢駅の長い階段を転ばないで行かれたのか・・・
先生!あなたは、どこの先生ですか?
後をつけて確認したくなりました。

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